1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08451027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 忍 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (20252398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
唐澤 真弓 白百合女子大学, 文学部, 助手 (60255940)
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Keywords | 自己 / 文化 / 会話 / 社会的認知 / 自己向上 / 自己批判 / 発話意図 |
Research Abstract |
日本的自己の諸相を理解するために本年度は、計画にある研究2、3のそれぞれに関して次のような成果を上げることができた。また、計画のもとにある基本的構想にたいして新たなアプローチへの手がかりも得つつある。 1。研究2。自己向上と「日本的」効能感 大学生94名を対象に、過去一年を振り返って最も印象に残っている経験を記述するように求め、その内容分析をしたところ、「ある一定の傷害や失敗が生じたものの、そこから結果的には良い何物かが得られた」という構成を持つストーリーが非常に多く挙げられることを見いだした。この結果は、日本における自己向上スクリプトの存在を強く示唆している。 2。研究3。間接的自己肯定と精神・身体的健康 当初は大学生と社会人一般を対象にする予定だったが、健康の度合いの分散がきわめて限られてしまうことへの懸念からこれを断念し、その代わりに同様の分散がきわめて大きいと考えられる妊娠中の女性を対象に調査を行うことに決定した。幸い、松山市の愛媛県立中央病院の同産期センターの協力を得ることができ、妊婦12名、助産婦8名を対象に聞き取り調査を実施し、妊娠期における精神的、身体的問題点、困難、不安感の性質などについて詳細な資料を得、それをもとに現在質問票を作成中である。 3。その他 日本人は自己批判傾向が非常に強いにもかかわらず、自己に対する愛着も感じるという一見矛盾する現象を説明するために、「自己・思いやり仮説」を提唱した。「自己・思いやり仮説」では、日本には他者への思いやりという慣習と文化的意味が広く共有されているため、人は同様の心理的、意味的構造を自己にあてはめることにより、自らを評価し、自己を感情的に経験すると仮定される。自己にあるこのような感情的構造の結果、自らに欠点を見いだすことは、自らに対して好意的な感情(「思いやり」)を感じることと密接に結びついていると考えられる。この仮説から、他者に対する思いやりの程度と自己愛着の程度は相関するであろうと予測できる。現在、この仮説を検証するための調査を準備中である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 北山忍・唐澤真弓: "感情の文化心理学" 児童心理学の進歩. 35巻. 271-301 (1996)
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[Publications] Kitayama et al: "Individual and Collective precesses in the eonstruction of the self : Self enhancement in US and Self-oriticism in JAPAN" Journal of Personality and Social Psychology. (印刷中).
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[Publications] Kitayama,S.&Karasawa.M.: "Implicit Self-esteem in Japan : Name Letters and birthday numbers" Personality and Social Psychology Bulletin. (印刷中).