Research Abstract |
本年度の研究によって得られた新たな知見としては,まず第一に,大規模酪等の専業的農業経営は,後継者が配偶者を得て直系家族を再構成し得るか否かによって,農業経営が拡大したり縮少することが明白となった。これは,農家の経営面積や施設への資本投下量よりも強い要因となっている。わかりやすく言えば,嫁さんをもらえなければ,いくら資本を投下し施設や雇用を充実しても,長続きせず,酪農経営は縮少する傾向にある。 それ故,北海道標茶町の酪農農家は本州等からきた実習性にねらいを定め,嫁や婿とし人材を取り込むことに努力している。すなわち,実習性制度は単なる労働訓練の場だけではなく,嫁や婿養子の獲保の場となっている。標茶町の紅別地区では,全酪農家の約20%弱が婿養子を取っていた。 第二の知見としては,大山町などに見られる如く,農業振興に努力し,農業振興で『ムラおこし』がうまくいった所ほど,今後急速に高齢化比率が増大してくることが予測される。すなわち,1960年代〜1980年代にかけて,過疎化に伴う壮年層の都市流出を,農業振興によってくい止めた所では,その層が向老期を迎え始めている。しかも,若年層の都市流出が完全に止った訳でもなく,さらに,農家の若夫婦世代では少産化が定着しつつあり,その結果,少子化に伴う高齢化率の上昇が,農業振興地帯でも本格化してきたとみなされる。 第三の知見としては,中山間地域での市町村がIターン,Uターン用の安価な公営住宅を建設すると,入居者はIターン,Uターン者より,村内で二世代同居していた若者夫婦の家族が入居し,村内別居の形を取る傾向が強く見られる。農山村での直系家族のあり方に変化がおこっていると見なされる。
|