1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08451085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
工藤 雅樹 福島大学, 行政社会学部, 教授 (30132004)
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Keywords | 平安時代 / 高地性集落 / 東北地方北部 / 蝦夷 |
Research Abstract |
平成九年度には、平成八年度に行なった岩手県岩手群西根町寺田に所在する暮坪遺跡の現状を確認するための踏査の結果をふまえて、暮坪遺跡の発掘調査を実施し、あわせて岩手県北部に所在する高地性集落遺跡の所在確認と現状把握のための調査を実施した。 暮坪遺跡は海抜約430メートルの暮坪山の頂上部に存在する。ここに幅約40メートル、長さ約200メートルの比較的平坦な部分があり、この部分に約30個前後の竪穴住居跡がくぼみとなって観察できる。遺跡のほぼ中央部は、山頂平坦部の幅がもっとも狭くなっている部分で、ここに尾根線を切断する堀があり、この堀を境に遺跡は南半部と北半部とにわけられる。南半部には大形の住居跡が二軒と、十数軒のやや小形の住居が存在する。南半部の南側と西側の斜面には二重の段が観察できる。北半部にも10数個の住居跡が見られる。 今年度はそのうち、遺跡南半部で2基、北半部で1基の小形の住居跡を発掘した。また南半部の南側と西側斜面の段の実態を解明するための発掘を行ない、段は山の斜面を急斜面をつくり出すために切り落したものであり、切り落しの裾の部分は堀状になっていることが判明した。西側では斜面の上部に人工的な平坦面があり、この部分では火を燃やした痕跡が認められた。斜面の下方では、二段の階段状に切り落としがあり、その裾の部分は堀になっている。 このような遺跡の状況から暮坪遺跡は、敵の攻撃にそなえた防御性集落であると考えられる。平安時代の高地性集落は東北北部にのみ存在する。今後もこの種の集落の調査を続行し、高地性集落を残した蝦夷社会の解明にむけて、その構造や年代などを追及したいと考えている。
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