1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08451098
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富士川 義之 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20083264)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HUGHES G.E.H 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 客員教授
大橋 洋一 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (20126014)
高橋 和久 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (10108102)
|
Keywords | ロマン主義 / 成長 / 教養小説 / 自己劇化 |
Research Abstract |
ロマン主義は19世紀のイギリス文化を席巻する思潮であるが、ホイッグ的『エディンバラ評論』とトーリー的『季刊評論』の論調の対立は甚だしい。しかも、それはいわゆる湖水詩人たちへの評価の違いとして示されるのだが、そこには保守対革新という図式では割り切れないねじれの構造が窺われる。革新派が政治的革新を標榜する詩人を評価せず、保守派が評価する、革新派が耽美的詩人を評価し、保守派が評価しない、という現象が見られるのである。それにもかかわらず、超保守的色彩を帯びた『ブラックウッズ・マガジン』が革新派の雄ハズリットに対して激しい攻撃を行いながら、一方で、フランス革命を象徴的事件とする激動の時代に反応する詩人たちとして、様々な傾向を持つ詩人たちを一つのグループとして分類したものが、現在「ロマン派」とされる詩人たちと重なるという事実を見出すことができる。これらは耽美派を中心とする「超自然」の領域への関心を含めて、ロマン主義という概念が単一のイデオロギーの産物でないことを明らかにしている。平成9年度の研究はおおよそ以上の点を確認、検証した。平成10年度は、そうした知見を整理し、ロマン主義概念の見直しを図りつつ、ヴィクトリア朝文学との関連、例えば『ブラックウッズ』を愛読したブロンテ姉妹が描き出した自己劇化を前景化した著作に、そのように錯綜した思潮がどのように投影され、ワ-ズワスに代表される子供の神話が、一般にブルジョア市民への主人公の成長の道程を描いたとされるディケンズの教養小説とどう結びついているか、といった点を考察することになる。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] 富士川 義之: "黄金の杖 I〜V" 大航海. 14-18. 14,14-19,17 175,156-182,161 178-184 (1997)
-
[Publications] 富士川 義之: "フレイザーとフロイト I・II" 大航海. 19-20. 153-159 164-170 (1997)
-
[Publications] 富士川 義之: "ワイルドの芸術論 I" 大航海. 21. 180-185 (1998)
-
[Publications] G.E.H.Hughes: "Questions and Conflicts : Purgatory and the "Vision" Papers" W.B.Yeats and His Connections (ソウル・イエ-ツ協会). 165-179 (1997)
-
[Publications] G.E.H.Hughes: "Scandalons-Matters : O'Faolain,Bowen and the Art" The Harp. 12. 113-121 (1997)
-
[Publications] 高橋 和久: "「エトリックの羊飼い」-或いは、羊飼いのレトリック-(12)" 英誌青年. 143・12. 712-714 (1998)
-
[Publications] G.E.H.Hughes(編): "Corresponding Powers" Boydell and Brewer, 248 (1997)