1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08451100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田村 毅 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90011379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 淳二 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (30282544)
中地 義和 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50188942)
月村 辰雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50143342)
塩川 徹也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (00109050)
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Keywords | 語り手「私」 / ディスクール / 作者 / 物語 / 自意識 / 近代的自我 / フランス文学 / サルトル |
Research Abstract |
本研究が問いかけるのは、文学的テクストのディスクールを支える一人称単数形の代名詞「私」が、作者の自我とどのような繋がりを持ち、彼の内密の自意識をどのように反映するのか、あるいはまた反映しないのかという問題である。そして本研究が目的とするのは、語り手「私」の構造と機能の変貌のメカニスムを歴史的に明らかにすることによって、この問題を解明することである。研究初年度にあたり、各研究分担者は、語り手「私」についての通説の再検討と、近年次々と提出されている諸仮説の検証を行った。とりわけ、ミシェル・ザンクの新説に基づき、中世の教化物語類の語り手「私」の作品上のスタチュ(身分)の検討が行われ(月村)、またフィリップ・セリエ等の所説に基づき、アウグスティヌスの『告白』における「私」の語りが、中世以降とりわけ古典主義時代の諸作品に及ぼした影響の検討が行われた。特筆すべき試みとして、18世紀中葉にいたるまで圧倒的な知的影響力を保持した古典修辞学におけるディスクールの主体「私」と、フランス文学との関係を検討する作業が行われた。この作業は、次年度以降も継続される予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 塩川 徹也: "良識はどのように公平に分配されているか-bon sensと誤謬論" 岩波書店『思想』. 11月号. 40-55 (1996)
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[Publications] 月村辰雄: "書簡術の時代-中世からルネサンスへ" 大修館『言語』. 1月号. 54-61 (1997)
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[Publications] 中地義和: "鳥の陶酔を夢みる作家" ル・クレジオ『もうひとつの場所』(新潮社)解題. 155-172 (1996)
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[Publications] 佐藤 淳二: "コンテクストとしてのヴォルテ-ル-『百科全書』項目「ジュネ-ブ」とその周辺" 仏語仏文学研究. 15号. 21-42 (1997)
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[Publications] 田村 毅(共著): "事典・ジェラール・ド・ネルヴァル" ネルヴァル研究会, 167 (1996)
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[Publications] 中地 義和: "ランボ--精霊と道化のあいだ" 青土社, 315 (1996)