1996 Fiscal Year Annual Research Report
発話の韻律構造と語用論的・パラ言語的意味の関連についての実験的研究
Project/Area Number |
08451106
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The National Institute for Japanese Language |
Principal Investigator |
前川 喜久雄 国立国語研究所, 言語行動研究部, 室長 (20173693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桐谷 滋 東京大学, 医学部, 教授 (90010032)
吉岡 泰夫 国立国語研究所, 言語変化研究部, 室長 (90200948)
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Keywords | パラ言語 / 韻律 / イントネーション / 無アクセント方言 / 終助詞 / 丁寧さ |
Research Abstract |
1 東京方言(標準語)を対象に種々のパラ言語的情報の表出にかかわる音声特徴を音響学的手法によって検討するため,「ソ-デスカ」というテクストを6種類のパラ言語的意味(「疑い」「感心」「落胆」等)のもとに発音した資料を分析した. 持続時間長,スペクトル特徴,音声基本周波数のすべてにわたってきわめて顕著な変化が観察された.特に重要な知見として,或る種のパラ言語的情報は言語的情報の一部としてのアクセントの実現タイミングを大幅に変化させたり実現そのものを阻止したりもすることを確認した. 2 熊本方言を対象として発話の丁寧さに関与する語彙的要因と韻律的要因との相互作用を知覚実験により検討した.疑問詞疑問文「ドレニノボル」の末尾に丁寧さによって使い分けられる3種の終助詞ト,ヤ,ナを付加して丁寧さを語彙的に制御する一方,発話のピッチ形状を(1)ピーク位置(3種類)と(2)末尾形状(上昇/下降)に関して制御することによって合計18種類の音声を刺激音として作成した.これらを熊本方言話者約50名に呈示し,一対比較法により丁寧さに関する各発話の序列を決定した. 実験結果は語彙的に定まる丁寧さの序列がピッチの変化によって容易に覆されることを示しており,音声言語によるコミュニケーションにおいて韻律特徴が果たす役割の大きさを示唆するものであった.また,6種類のピッチ形状間の丁寧さの序列を決定する要因についても検討を加え,以下の知見を得た.(1)末尾の上昇は丁寧さを一様に上昇させる.この場合ピーク位置による丁寧さの差はほとんど検出されない.(2)末尾が下降する発話ではピーク位置が丁寧さの判定を決定する.ピーク位置が発話末尾に近いほど丁寧と知覚される. 3 来年度は仙台,福島などの無敬語方言地域において熊本と同様の実験をおこなう予定である.
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