1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08451109
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中務 哲郎 京都大学, 文学研究科, 教授 (50093282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 忠利 東海大学, 文学部, 教授 (50132600)
南川 高志 京都大学, 文学研究科, 教授 (40174099)
高橋 宏幸 京都大学, 文学研究科, 助教授 (30188049)
内山 勝利 京都大学, 文学研究科, 教授 (80098102)
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Keywords | 口承文芸 / ソクラテス以前哲学者 / ローマ帝国 |
Research Abstract |
今年度は昨年に引き続き,ギリシア・ローマの作家がいかなる危機意識をもって各時代と対したか,彼らは抱く危機意識がどのように作品に反映したかを考察した.古典期のギリシアはアルファベットを知って既に数世紀,アルファベットを用いることによる知識人の,あるいは政治制度の革命的変化が起こりつつあると言われる時代である.中務は,作家の創作と思想の伝達が口承中心から書承の重視に移行する時代のギリシア人の精神状況を検討するため,ホメロスの叙事詩およびエウリピデスの悲劇における口承文芸の利用について考察した.エウリピデス 『キュクロプス』 においては,口承文芸の素材を用いながら痛烈な戦争批判が行われていることが確認された(論文は1998年5月刊行予定).内山は,神話的思想を脱した初期ギリシア哲学者達の自然と人間に関する思索を検証すべく,『ソクラテス以前哲学者断片集』 第2,第3,第4分冊を上梓した.南川は,「人類史上最も幸福であった時代」とされたローマ帝国最盛期に,その闇に隠された権力闘争の実体を探ることにより,帝国史にひそむ危機を抉出した.高橋は,ギリシア神話の魅力あふれる物語を華麗な文体で綴るオウィディウスが,その語りにこめたローマの歴史に対する思いを考察した.久保田は,アリストパネスの「ファンタジ-もの」と呼ばれる諸喜劇が,実は時代の危機を色濃く反映する者であることを,主に 『鳥』 において考察した.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 中務 哲郎: "『饗宴』 のはじまり" 季刊文学・増刊「酒と日本文化」. 増刊. 208-209 (1997)
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[Publications] 内山 勝科(編訳): "ソクラテス以前哲学者断片集 第IV分冊" 岩波書店, 328 (1998)
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[Publications] 南川高志: "ローマ五賢帝「輝ける世紀」の虚像と実像" 講談社, 244 (1998)