1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08451109
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中務 哲郎 京都大学, 文学研究科, 教授 (50093282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 忠利 東海大学, 文学部, 教授 (50132600)
南川 高志 京都大学, 文学研究科, 教授 (40174099)
高橋 宏幸 京都大学, 文学研究科, 助教授 (30188049)
内山 勝利 京都大学, 文学研究科, 教授 (80098102)
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Keywords | 五時代説話 / ソクラテス以前哲学者 / アリストパネス / キケロ / リウィウス / タキトゥス |
Research Abstract |
5人の研究分担者は前8世紀から後1世紀に至るギリシア・ラテン文学の各時代の代表者について,それぞれ危機の時代との関わりを考察した.すなわち,中務はヘシオドスの五時代説話が言われる如く堕落史観を表したものなのが,複雑な解釈史を振り返りつつ考えた.内山は,日蝕や彗星等の稀有な天空現象を人間世界の異常な事件に結びつけようとせず、その正体を解明しようとしで様々な仮説を提示したギリシア人の特異な精神から出発して,知的認識という世界に対する全く新しい態度がいかに時代の危機を切り開き哲学と科学を成立させたかを考察した.久保田は,アテナイ帝国主義の自殺的暴挙といわれたシシリー遠征(前415)の翌年に上演されたアリストパネスの喜劇゙『鳥』を手がかりに、これは政治的メッセージなのかファンタジーによる現実逃避なのか,極端に対立する解釈を検討しながら,危機の時代の文学者のあり方を論じた. 未曾有の内乱を終息に導き元首政を開始したアウグストゥスの時代に,ラテン文学はかつてない歴史意識の高まりを見せる.高橋は,歴史不在といわれたローマにおいて,ギリシアのヘロドトスやトゥキュディデスに倣いつつ,あるいは対抗しつつ,弁論家キケロがいがなる歴史理論を打ち出したか,作家がいかなる歴史書を書き始めたかを考察した.南川は,タキトゥスの『アグリコラ』を通じて歴史家の警世について考えた.『ゲルマニア』においては,ローマ人がかつて保有していて今は失ってしまった自由と剛毅の精神を保持するゲルマニアの脅威を警告したが,『アグリコラ』においてはブリタンニアを記述することにより,タキトゥスはローマ帝国の運命にいかに関わろうとしたかを考察した.
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 中務哲郎: "ギリシア文学における口承文芸の利用-キュクロプス譚の場合-" 説話・伝承学. 6. 1-15 (1998)
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[Publications] 中務哲郎: "古典の運命-ギリシア文学はどれだけ残ったか" 大学出版. 38. 6-10 (1998)
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[Publications] 内山勝利: "技術と目的性" 世界思想. 25. 13-16 (1998)
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[Publications] 高橋宏幸: "リウィウス第5巻の神話範例-ob unam mulierem" 西洋古典論集. 16. (1999)
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[Publications] 南川高志: "ローマ皇帝政治の進展と貴族社会" 木村他編「岩波講座世界歴史4」. 321-342 (1998)
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[Publications] 中務哲郎: "イソップ寓話集" 岩波書店, 411 (1999)
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[Publications] 内山勝利: "新・哲学講義(別巻)哲学に何ができるか" 岩波書店, 239 (1992)