1998 Fiscal Year Annual Research Report
デジタル・スカイ・サーベイによる吸収線の統計的研究
Project/Area Number |
08454052
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
池内 了 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90025461)
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Keywords | デジタル・スカイ・サーベイ / クェーサー / 吸収線系 / ミニハロー / 銀河間物質 / 観測的宇宙論 |
Research Abstract |
スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)は、1998年6月にようやくファーストライトを迎え、試験観測に入った.現在は、試験観測の結果を解析して装置や望遠鏡の再整備を行っており、いよいよ4月から南天の観測に入る.このように、予想以上に望遠鏡製作が遅れたので、本課題のSDSSのデータを用いたクェーサーの吸収線の統計的研究は不可能であったが、ケック望遠鏡による高波長分解能観測による金属線吸収系およびハッブル宇宙望遠鏡による低赤方偏移のライマン・アルファ雲の吸収系についての、統計的研究を行い、吸収体の物理的状態やその進化について結果を得た.金属線については、高波長分解能観測結果の解析から、CやSiのイオン化状態と存在量を分離することが可能になり、存在量そのものの時間変化は少なく、すべての吸収線系に共通するが、イオン化状態は宇宙の時間の間数として大きく変化し、それも吸収線ごとに異なる可能性を指摘した.また、ライマン・アルファ吸収線については、宇宙背景紫外線放射の強度と時間変化を考慮しても、低赤方偏移での吸収線の数変化を再現できないことから、(1)紫外線放射の時間変化として、赤方偏移zが1付近にピークがあると考えるか(これまでの通説では、z=2付近にピークがあると考えられている)、(2)ライマン・アルファ雲が互いの重力で融合し数が減少しているとするか(平均の減少時間は約30億年)、のいずれかであらねばならないことを示した.(1)の場合は、銀河の光度変化のモデルと良く一致しており、もしそうなら宇宙背景放射には銀河からの寄与が大きいと考えられる.(2)の場合は、比較的雲の数の減少時間が長く、このような時間スケールで宇宙の構造形成が進んだことを意味する.現時点では、いずれの可能性が大きいが判断できないが、今後のSDSSによる吸収線系のデータで結論を出したい.
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[Publications] P.Khara: "The Ionization and Abcendance of C and Si in QSO Absorbers" Pub.Astron.Soc.Japan. 50. 13-18 (1998)
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[Publications] Y.Taniguchi: "Formation of Quasar Nuclei in the Heart of Ultraluminous Infrared Galaxies" Astrophysical J.531(印刷中). (1999)
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[Publications] K.Okoshi: "Evolution of Lyman α Clouds at Low Redshifts" Pub.Astron.Soc.Japan. 51(印刷中). (1999)