1997 Fiscal Year Annual Research Report
有機磁性体のスピン構造とスピンダイナミックスの中性子散乱による研究
Project/Area Number |
08454099
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
冨吉 昇一 愛媛大学, 工学部, 教授 (50005922)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 健介 愛媛大学, 理学部, 助手 (00263921)
東 長雄 愛媛大学, 理学部, 教授 (00093914)
|
Keywords | 有機磁性体 / 中性子回折 / スピン構造 / TPV / 分子磁性 |
Research Abstract |
有機磁性体は磁気モーメントが分子軌道上の不対電子により発生し、磁性が分子軌道と密接に関連する新しい磁性の分野であるが、中性子回折によるスピン構造の系統的研究は殆ど行われていない。これは有機磁性体ではスピン密度が低く、しかも水素による散乱中性子のバックグランドが高く、中性子回折による測定が非常に難しいからである。 我々は1.78Kにネ-ル温度を持つ有機反強磁性体であるTPVについて、そのスピン構造を解明する研究を行っているが、この研究では、バックブランドを少なくするために水素を重水素で置換したTPV単結晶を作製し、磁化測定、低温X線回折、及び中性子回折の測定を行った。重水化しても結晶構造及び磁気的性質は殆ど変化しないことが判明した。 中性子回折では重水化した単結晶を用いることによりバックグランドは2/3から1/2に下がり、小さな磁気反射ピークの測定も可能になり12ヶのピークについて磁気反射強度を求めることが出来た。それらをスピン構造モデルを用いて解析した結果、反強磁性的なスピンのチェーンがc-軸方向に進むモデルが最も実験データと良く一致することが明らかになった。スピン密度としてはverdazyl環上の4ヶの窒素原子が同じ大きさの1/4μ_Bの磁気モーメントを持つとするスピン分布が、最も実験データに近いものであり、磁気共鳴から導かれた分布に近いものであることが明らかになった。中性子回折の測定精度が上がれば磁気共鳴から得られる結果との関係がより明確になり、スピン密度分布及び分子軌道をこれらの測定手段により精度良く決めることが出来るようになるものと思われる。
|
-
[Publications] K.Konishi et al.: "Pressure effect on the Curie temperature and intermolecular interactions in organic ferromagnet β-phase p-NPNN" Mol.Crys.Liq.Crys. 279. 115-122 (1996)
-
[Publications] N.Azuma et al.: "Crystal structure and ESR study of a nitridocrhomium(V)complex." Inorg.Chemica Acta. 266. 29-36 (1997)
-
[Publications] S.Tomiyoshi et al.: "Neutron diffraction study of the organic antiferromagnet TPV" Active Report on Neutron Scattering Reseach. 4. 95-95 (1997)