1996 Fiscal Year Annual Research Report
移相子を用いたX線磁気回析法の開発および強磁性ウラン化合物への応用
Project/Area Number |
08454101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 正久 姫路工業大学, 理学部, 助教授 (90124362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 馨一 高エネルギー物理学研究所, 放射光実験施設, 助手 (40218798)
小泉 昭久 姫路工業大学, 理学部, 助手 (00244682)
坂井 信彦 姫路工業大学, 理学部, 教授 (60013497)
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Keywords | X線磁気回折 / X線磁気ブラッグ散乱 / 移相子 / 非共鳴磁気散乱 |
Research Abstract |
本年度の実績は以下の2つである。(1)X線移相子を世界で初めてX線磁気回析実験に適用し、成果を得た。(2)X線磁気回折専用の4軸回折計を導入した。以下に、それぞれについて詳述する。 (1)本研究では透過型X線移相子をX線磁気回折実験に適用した。透過型X線移相子とは、直線偏光の入射X線から任意の偏光度(直線偏光度と円偏光度)のX線を生成するX線光学素子である。軽元素である炭素からなるダイヤモンドの良質な単結晶が作成できるようになり、数keV-十数keV程度のX線でも充分な透過率が得られるようになり、実用化された。X線磁気吸収実験(MCD)等に使われ始めている。本研究では、通常粉末を試料とするX線磁気吸収実験よりももう一段困難さを伴う単結晶を試料とするX線磁気回折実験へ、X線移相子を初めて適用した。試料は、従来行なってきた白色X線磁気回折実験で使用したFeの単結晶を用いた。移相子結晶のブラッグ角からのズレの角度Δθを変化させながら、磁化反転に伴う回折強度の変化Rを測定した。RはΔθの変化に伴う直線偏光度と円偏光度の変化から理論的に見積ることができる。実験から得られたR vs.Δθ曲線は理論曲線とよく合っており、X線磁気回折において移相子が有効に機能し得ることを初めて示すことができた。来年度は、試料の磁化反転の替わりに、移相子によるX線光子のヘリシティの反転(右回り円偏光〈--〉左回り円偏光の反転)による磁気回折実験を目指す。 (2)現有設備である、電磁石およびHeガス循環型冷凍機と組み合わせて使用できる、X線磁気回折実験専用の回折計を設計・作製し、高エネルギー物理学研究所・放射光実験施設へ導入した。これにより、磁場中で、試料を冷却した状態で試料結晶のリモートコントロールによる方位調整が可能となった。次年度において、上記の移相子と組み合わせて、新しい試料でのX線磁気回折を行なう予定である。
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