1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08454175
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
森岡 義幸 埼玉大学, 理学部, 助教授 (20004492)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 瑛一 埼玉大学, 理学部, 教授 (50062641)
|
Keywords | ルテニウム錯体 / 光誘起準安定状態 / 赤外分光 / ラマン分光 |
Research Abstract |
5種類のビス(二座配位子)型ニトロシルルテニウム錯体,cis-[Ru(Hox)(en)_2NO]Cl_2・EtOH,trans-Ru(Hox)(en)_2NO]Cl_2,cis-K[Ru(ox)_2(en)NO]・3H_2O,cis-[Ru(Hox)(en)NO],およびcis-K[Ru(ox)_2(en)NO]),の光誘起準安定状態について研究した. 本研究で用いた波長範囲(514.5-441.6nm)では短波長ほど準安定状態生成量は大きく,441.6nmで最大となった.準安定状態生成後632,8nmの光照射を行うと基底状態に戻った.可視吸収スペクトルの最も長波長側のバンドが金属から配位子へのMLCTバンドであり,このバンドを励起することによって準定状態が生成すると考えられる.ところが,準安定状態生成量と電荷移動吸収帯のピーク位置が一致しない.このことは,準安定状態の生成量が,基底状態分子,および準安定状態分子のモル吸光係数の比で決定されることによるため,と考えられる,実際,trans-[Ru(Hox)(en)_2NO]Cl_2の単結晶を用いた測定を行い,準安定状態分子が約600nmをピークとする幅広い可視吸収帯をもつことを見出した. 準安定状態は77Kでは安定に存在するが,高温になるほど基底状態への戻りが顕著になる.各温度で一定に保ち,441.6nm光を切った後の準安定状態NO伸縮振動の吸光度の減衰を測定した.減衰過程は一次反応の速度式で良く表される.各温度での消滅速度定数を求めてArrheniusプロットを行ない,活性化エネルギーE_aおよび頻度因子Zを求めた.準安定状態の熱的な安定性を各錯体と比較するために,消滅温度を,“消滅の反応速度が1/1000s^<-1>となる温度(生成量が半分に減るのに約10分要する温度)"と定義した.trans-[Ru(Hox)(en)_2NO]Cl_2はこれまでに知られているものの中で最も高い消滅温度を示した.今までに報告されているものも含め比較してみると,二座配位子がトランス型に配位した錯体がより高い消滅温度をもつ傾向が見られ,また消滅温度とMLCTバンドに相関があることを見出した.
|
Research Products
(1 results)