1997 Fiscal Year Annual Research Report
溶媒和クラスター内エネルギー散逸過程の実時間領域測定
Project/Area Number |
08454177
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大島 康裕 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60213708)
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Keywords | クラスター / ピコ秒時間分解分光 / 溶媒和 / エネルギー散逸 / レーザー誘起蛍光 / 電子移動反応 / 系間交差 |
Research Abstract |
本研究の目的は、溶媒和型クラスターにおけるエネルギー散逸過程を実時間領域での測定により解明し、凝縮相における普遍的動的現象であるエネルギー散逸過程を、分子論的に理解するための基礎を構築することである。研究の2年度である本年は、以下のような結果を得た。 1。極性溶媒中では、分子内ねじれ運動をともなった電荷移動反応を起こすビアントリルについて、水との1:1クラスターにおける反応速度をピコ秒時間分解蛍光分光法によって測定した。励起エネルギーや同位体置換に対する依存性から、反応が水分子の配向運動に影響されないことが示唆された。これは、クラスター内での反応が液相とは異なった独自の機構で進行する可能性を示す。また、2波長ポンプ・プローブ法によって電荷移動状態からの吸収を超音速ジェット条件下で初めて測定することに成功した。 2。アントラセンとNH_3からなるクラスターについてレーザー誘起蛍光の測定を行い、クラスター内における溶媒分子の相対運動のついて情報を得た。特に、2波長ホールバーニング分光を適用することにより、微弱な分子間振動バンドを高感度で検出した。溶媒が1個結合したクラスターにおいては、溶媒分子の内部回転による特徴的な分裂パターンが観測された。一方、溶媒が2個以上のクラスターでは、溶媒全体の変形運動に対応する低波数振動モードがある程度の強度を持つことが明らかになった。この結果は、溶質の光励起にともなう溶媒全体の安定構造の変化を、サイズを選別して分光学的に促えたことに対応する。 3。溶液中では溶媒によって系間交差の反応速度が大きく変化することが知られているアクリジンについて、レーザー誘起蛍光法によって気相中での蛍光スペクトルを始めて観測した。さらに水・メタノールなどの水素結合性の溶媒分子とのクラスターについても観測を行い、溶媒和によって蛍光量子収率が急激に大きくなることを見出した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] H.Kohguchi, et al.: "Laser-induced-fluorescence spectroscopy of the C^2Σ^+-Χ^2Π_<1/2> band system of the CCN radical in a supersonic jet" The Journal of Chemical Physics. 106. 5429-5438 (1997)
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[Publications] K.Tanaka, et al.: "Pulsed discharge nozzle Fourier transform microwave spectroscopy of the propargyl radical (H_2CCCH)" The Journal of Chemical Physics. 107. 2728-2733 (1997)
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[Publications] M.Matumura, et al.: "Fourier-transform microwave spectroscopy of the argon-diacetylene van der Waals complex" Journal of Molecular Spectroscopy. 185. 178-184 (1997)
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[Publications] H.Hoshina, et al.: "Laser-induced fluorescence spectroscopy of the C_4H and C_4D radicals in a supersonic jet" The Journal of Chemical Physics. 108. 3465-3478 (1998)