1996 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応ダイナミックスを解明するための速度論的解析法の確立
Project/Area Number |
08454181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山さき 勝義 新潟大学, 理学部, 助教授 (90210385)
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Keywords | 反応速度定数 / 振動緩和 / レーザ励起蛍光 / 線形解析 / 振動分布 |
Research Abstract |
レーザ誘起蛍光(LIF)励起スペクトルの強度解析は反応生成分子の初期振動状態分布を決定する代表的な手法であるが,その解析には,観測した振電遷移に関するFranck-Condon因子あるいは前期解難や消光過程の影響を含めた発光量子収率の振動準位依存性など,様々な光化学的因子に関する情報が必要である。2原子分子の場合でさえ,これらすべての因子に関する正確な数値を揃えることは困難である。本研究の初年度の目的は,LIF法の上記の問題点を解決し,各振動準位に関する振動緩和速度定数,相対検出感度および初期振動状態分布を同時に決定することが可能な新しい速度論的解析法の理論の確立にある。 研究成果として,従来,非線形解析式しか利用できなかった濃度経時変化の解析の線形化に成功し,一般的反応網に適用できることを証明した。同法によれば,衝突条件下で観測された注目振動準位の占有数の経時変化の観測結果のみから,振動緩和速度定数,準位間相対検出感度,初期生成振動状態分布を一義的に決定することが可能であることを証明した。また,同法は実際系に応用する場合に, 1)Franck-Condon因子や発光量子収率などの光化学的因子に関する情報を全く必要としない。 2)検出レーザによる飽和や多光子過程が起こっていても問題が生じない。 注目している反応が短時間にパルス的に終了する必要がない。 A→B→C反応系においてA→BとB→Cの速度定数がきわめて近い場合でも安全に解析することが可能である。 などの特徴を備えており,従来の励起スペクトル解析による初期振動分布の決定や,濃度の経時変化に対する非線形double-exponential最小二乗フィットの問題点を確実に回避できる方法として極めて有効であることを示した。
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