1997 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応ダイナミックスを解明するための速度論的解析法の確立
Project/Area Number |
08454181
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山崎 勝義 新潟大学, 理学部, 教授 (90210385)
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Keywords | 反応速度定数 / 振動緩和 / レーザー誘起蛍光 / 線形解析 |
Research Abstract |
最近,成層圏でのオゾン生成に対して振動励起酸素分子が関与している可能性が報告され,振動励起分子の化学反応が注目されている。しかし,振動励起分子と他分子との衝突においては,エニルギー移動としての振動緩和過程と物質変換過程としての化学反応過程が同時に進行し,その分岐比の情報を獲得しない限り個々の反応の意義を明らかにすることはできない。本研究では,振動励起OHラジカル(X^2・・_i,ν=0〜4)を対象としてCH_4およびNH_3との衝突における総括反応速度定数を,本研究で開発した「Profile積分法」により決定し,さらに,OHラジカルの初期振動分布に関する情報を利用して,振動緩和と化学反応の分岐比を決定した。OH(ν)+CH_4系では,ν=1化学反応速度がν=0に比べて29倍,O(^1D)+NH_3系では53倍の速度の増大を確認し,振動量子1つの励起が化学反応を大きく加速することを見出した。また,OH(ν)+CH_4系で,ν=2の振動緩和速度がν=1に比べて3.2倍速いのに対し,化学反応速度は5.6倍の加速を示した。OH(ν)+NH_3系でも同様に,ν=2の振動緩和速度がν=1に対して2.6倍であるのに対し,化学反応速度は7.6倍となっており,OH振動励起の化学反応に対する加速効果が振動緩和に対するよりも大きいことを明らかにした。さらに,ν=3,4については,過去に報告されているO(^1D)+CH_4およびO(^1D)+NH_3反応のOH初期振動分布がν=3以上に関して不正確であることを指摘した。今後,振動緩和過程だけが起こる条件下での観測を行い,本研究で確立した解析法を適用して,正しい初期振動分布を決定する予定である。本研究の解析法は,従来の非線形最小2乗フィットの欠点や問題点を確実に回避する方法として極めて有効であり,研究目的である,速度論的解析法による反応ダイナミックス情報の獲得が計画通り実現された。
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[Publications] Katsuyoshi Yamasaki: "Application of a new method to the determination of rate constants : Examination of the effect of noise an the data" International Journal of Chemical Kinetics. 30. 47-54 (1998)
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[Publications] Katsuyoshi Yamasaki: "A new method of determining the rate constants for stateto - state vibrational relaxation : an integrated profiles method" Bulletin of the Chemical Society of Japan. 70・1. 89-95 (1997)