1996 Fiscal Year Annual Research Report
立体保護を活用した安定な含ケイ素芳香族化合物(シラアロマティックス)の創製
Project/Area Number |
08454197
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 廉治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (70011567)
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Keywords | 芳香族性 / シラナフタレン / X線結晶解析 / 結合の非局在化 / ^<29>Si NMR |
Research Abstract |
ベンゼン、ナフタレンなどは有機化学において中心的役割を果たす重要な化合物であるが、その骨格炭素をケイ素に代えた含ケイ素芳香族化合物(シラアロマティックス)は極めて不安定であり、単離された例がない。本研究ではケイ素上に我々が開発した極めてかさ高い立体保護基である2,4,6-トリス〔ビス(トリメチルシリル)メチル〕フェニル基(Tbt基と略記)をもつ2-シラナフタレンの合成を行った。テトラヒドロ-2-シラナフタレンのジクロロ体から出発し、還元、TbtLiの反応、臭素化、還元、再度臭素化を経て前駆体を合成し、それをt-ブチルリチウムにより脱臭化水素反応を行い、目的の2-シラナフタレン(1)を無色結晶として得た。1は水、酸素とは極めて速やかに反応するが、熱的には非常に安定であり、各種スペクトルにより同定された。特に注目すべきは^<29>SiのNMRスペクトルであり、環内のケイ素が87.4ppmに観測されsp^2のケイ素を持つことが示された。またシラナフタレン骨格のCl-Si、Si-C3結合の^1J値がそれぞれ92、76Hzであることから明らかにケイ素を含む6員環部分π電子の非局在化が起こっていることが示された。1の構造は最終的にはX線結晶構造解析により決定された。シラナフタレン環は平面構造をもち、Tbt基とほぼ直交し、Tbt基がSi=C結合部分を非常に効率よく保護している。Cl-Si、Si-C2結合の長さは1.704、1.765Åで、共に単結合と二重結合の中間の値であり、結合長の面からも1が非局在化の起こった芳香族化合物であることが示された。このように1は芳香族としての安定化を受けていると考えられるが、そのSi=C結合は極めて反応性が高く、水、メタノール、ケトン、ジエンなどと効率よく反応し、対応する付加生成物を与えた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] N.Tokitoh: "The First 1,2,4-Thiadisiletane Ring Compound:Synthesis from an Overcrowded Silylene and Carbon Disulfide." J.Chem.Soc.,Chem.Commun.125-126 (1996)
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[Publications] N.Takeda: "Reaction of a Sterically Hindered Silylene with Isocyanides:The First Stable Silylene-Lewis Base Complexes." J.Am.Chem.Soc.(印刷中).