1998 Fiscal Year Annual Research Report
NMR緩和法による超高速化学反応速度の決定-分子内電子移動反応の場合
Project/Area Number |
08454235
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
益田 祐一 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (20181654)
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Keywords | 分子内電子移動 / 溶媒効果 / NMR / スピン-格子緩和 |
Research Abstract |
平成8年度、9年度の研究により確立された、NMR-スピン格子緩和時間から溶液内でのピコ秒オーダーの分子内電子移動速度定数を決定する方法を、以下の系について適用した。まず、それぞれの結果について簡単に記す。 (1)ビスフェロセニルアセチレンモノカチオン(Fe(II),Fe(III)) 9年度の研究によって明らかになった、予想を大きく上回る(数倍)電子移動定数について検討を加えた。ITバンド、ESRなどの測定結果を総合すると、この以上に大きな速度を与える原因として、(i)アセチレンブリッジの導入によって、2つのフェロセンユニット間のコンフォーメーショナルな剛直性が増し、トンネルによる電子移動の効果がより効率的に起こっている。(ii)えられた相関時間に対して、電子スピンの緩和時間の寄与が無視できないこと。などが考えられる。 (2)1,1^<〓11>-ジヨ-ドビフェロセンモノカチオン(Fe(II),Fe(III)) ITバンドのエネルギー、強度ともにビフェロセンモノカチオンと非常に類似しているにも関わらず、その電子移動速度は1/3程度であった。(ket=3×10^<11>s^<-1>)この原因の一つとして、サイズの大きな置換基の導入により、outer sphere reorganization energyが相対的に減少したことや、L-M-Lの伸縮振動周波数の減少などが考えられる。 本研究課題を通じて、電子的励起状態を経由しない電子移動速度に対する溶媒効果にたいして、共通に示された結果は以下の通りである。 観測された反応速度は、溶媒の動的効果を取り入れたいかなる理論から予想される値よりも5-10倍以上大きい。この原因として、 1. 溶媒の局所的な高速モードが速度定数に対して重要な効果をあたえる。 2. 本系で取り扱っているいるような対称的な反応系では、トンネル効果が重要な役割を担い、溶媒和の揺らぎに伴う、トンネルスプリッティングのゆらぎ及びそのダイナミックスが反応速度の溶媒依存性に重要な効果をもたらしている。 他方、このような反応速度にかかわる溶媒のダイナミックスについて検討するため、溶質分子(イオン)の回転緩和時間の溶媒依存性におけるサイズ効果について検討した。この結果、回転運動のタイムスケールに応じた溶媒のダイナミックスが回転運動に重要な寄与をすることが示された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] H.Hosoi: "Solvent Effect on Rotational Motion of Perchlorate lon" J.Phys.Chem.B. 102. 2995-3002 (1998)
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[Publications] H.Hosoi: "Solvent Effect on Intramolecular Electron Transfer Rates of 1,3-dinitrobezene Anion Radical" Chem.Lett.1998. 177-178 (1998)
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[Publications] Y.Masuda: "An Evaluation of the Overall Rotational Correlation Times of Tetraalkylammonium lons in Solution" Bull.Chem.Soc.Jpn.71. 1555-1563 (1998)
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[Publications] Y.Masuda: "ESR studies on Intramoleculor Electron transter rates of 1,3-dinitrobezoen Anion Radicul in solution" J.Phys.Chem.A. (投稿中).