1996 Fiscal Year Annual Research Report
外国産鳥類の野生化による土着鳥類群集の撹乱に関する研究
Project/Area Number |
08454252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江口 和洋 九州大学, 理学部, 助手 (60136421)
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Keywords | ソウシチョウ / 種間競争 / 繁殖生態 / 外来種 / 野生化 |
Research Abstract |
野生化鳥類であるソウシチョウが九州各地の森林で、急速に分布を広げつつある理由を明らかにするために、えびの高原(宮崎県)と油山(福岡県)において繁殖生態,営巣環境などの調査を行った。本年度は来年度以降行う野外実験の準備のために,主に繁殖生態の予備的な研究を行った。 主調査地のえびの高原においては,ソウシチョウのなわばり分布、生息密度の調査,巣のマッピング,巣の計測および周辺環境の記載,個体識別のための捕獲標識を行った. 調査地域内では26巣,地域外で12巣を発見した.潜在競争種と考えられるウグイスの巣は調査地域内では発見されず,地域外で6巣を発見した.調査地域内で29個体のソウシチョウ成鳥を捕獲し,計測,採血,標識を行った.血液標本は血縁および性判定を行うために保存している. 個体毎のさえずりの特徴を明らかにするため,9個体についてさえずりを録音した。この音声データについてソナグラム解析を行っている. 巣を定期的にチェックして、一腹卵数、孵化ヒナ数などの個体群パラメーター,ビデオ自動撮影および直接観察により親の育仔努力(給餌回数、滞巣時間など)や餌の種類などを調べた。 今年度の調査では以下のような新知見が得られた. 1)ソウシチョウの繁殖は8月まで継続しており,共存する他種鳥類に比べて繁殖期が長かった.これに関連してさえずり活動性の高レベルな期間も同様に長かった. 2)繁殖の失敗が多かった.繁殖途中での卵やヒナの消失がしばしば起こった.捕食の可能性が高い. 3)個体の入れ替わりが頻繁であった.さえずり以外の顕著ななわばり防衛行動は観察されなかった. これらの事実は,繁殖できないあぶれ個体の数が多い,または,なわばりへの侵入が頻繁であることを示唆している.また,番い外交尾の可能性も示唆している.
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