1998 Fiscal Year Annual Research Report
外国産鳥類の野性化による土着鳥類群集の撹乱に関する研究
Project/Area Number |
08454252
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
江口 和洋 九州大学, 理学部, 助手 (60136421)
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Keywords | ソウシチョウ / 種間競争 / 繁殖生態 / 営巣場所選択 / 移入種 / 外来種 |
Research Abstract |
外来種のソウシチョウが九州各地の自然林で急速に個体数の増加させ,分布を拡大している原因および在来鳥類群集への影響を明らかにするために,えびの高原(宮崎県,鹿児島県)において営巣場所選択,繁殖生態,潜在競合種のウグイスとの種間競争に関する研究を行った。 1) 営巣場所選択 繁殖密度はソウシチョウはウグイスの2倍以上であった(ソウシチョウ84巣,ウグイス41巣).両種とも林床のスズタケ群落内に営巣し,このような営巣習性の鳥類はこの2種に限られる.ウグイスの巣はスズタケ密度の高い地域に限られるが,ソウシチョウはスズタケの密度によらず広い範囲に分布していた.ソウシチョウが高密度に営巣可能な理由の一つは営巣場所の選択幅の広さにあると考えられる. 2) 繁殖生態 繁殖期間はソウシチョウが4月〜8月,ウグイスは4月〜7月であった.両種とも繁殖成功が非常に低かった(完成巣に対する巣立ち成功巣の割合:ソウシチョウ 5%(=4/83),ウグイス 0%(=0/41)).失敗の原因のほとんどは捕食であり,カケス,ヘビ類による捕食が確認された. 3) 種間競争 営巣場所に関しては,ソウシチョウとウグイスの分布の重なりは大きかったが,種間なわばりや種間攻撃などは観察されなかった.営巣場所に関する競争はないと考えられる.採餌行動の観察によると,ソウシチョウは森林の中下層部の樹木の枝葉部分で多く採餌し,シジュウカラ類との採餌空間の重複が大きかった.しかし,ソウシチョウはスズタケ群落上で採餌する事が多く,スズタケ群落から離れて採餌することの多いシジュウカラ類とは採餌場所を分けていた.ウグイスは主にスズタケ群落内で採餌しており,ソウシチョウとの重複は少なかった. ソウシチョウはスズタケ群落内での営巣や森林下層部での採餌など,森林鳥類群集内でも比較的利用する種が少ない営巣空間や採餌空間を占有している.また,繁殖期が多種に比べて長い傾向が見られた.このような,他種の占有しない空いたニッチを占有することで自然林内に定着し,個体数を増加させていると考えられる.
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