Research Abstract |
葉緑体核様体の分子構築を解明するため,本年度の研究では,核様体構成タンパク質のcDNAを得て,核様体におけるその存在様式を検討した。PD1とPD3は,昨年本研究室で得られたcDNAにコードされたタンパク質で,本年度は,これらを大腸菌で発現させたものを抗原として抗体を作成し,葉緑体の各画分との反応性を調べた。PD1は,2個のAT-hookモチーフの他,疎水領域を持つ新規の核様体タンパク質で,計算による分子質量は約35kDaであるが,電気泳動では50kDaと同等の泳動度を示した。PD3は,5個のAT-hookモチーフと4組のC2C2フィンガーをもつタンパク質で,前駆体ポリペプチドは180kDaであるが,葉緑体内では,トランジットペプチドの切断と,プロセシングにより,130kDaと40kDaとして核様体に存在していた。40kDaポリペプチドはストロマにも検出された。このほかに,核様体をNaClにより処理すると,DNAの遊離に伴って,70kDaタンパク質が特異的に遊離することが判明した。この新規タンパク質は,DNAとタンパク質を集合させて核様体構造をつくるために重要なタンパク質と考えられる。このタンパク質のアミノ末端配列を決定し,またこのタンパク質に対する抗体を作成した。この抗体を用いてcDNAのスクリーニングを進めており,いくつかの候補クローンが得られている。なお,上記のPD1,PD3タンパク質はいずれも,塩処理によって核様体から遊離することなく,極めて強固に結合していることがわかった。今後は,さらに多くのcDNAの単離を目指すとともに,核様体の中でのこれらのタンパク質の存在状態を調べていく。
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