1996 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の脳の組織図譜と機能地図の作製:高次神経機能の神経解剖学的、神経生理学的基礎
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08454270
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤 義博 九州大学, 理学部, 教授 (60037265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 明子 九州大学, 理学部, 助手 (80231611)
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Keywords | 昆虫 / 脳 / 神経解剖学 / 神経生理学 / 高次脳機能 / キノコ体 / 嗅葉 / 中心体 |
Research Abstract |
本年度は昆虫の脳の立体構造を比較し、脳の各部の機能の解析を行った。従来、研究者が「昆虫の脳と言う用語を用いる場合、種間の違いなどは考慮されず、昆虫の脳には一律の定型的イメージがあった。昆虫の脳は、キノコ体、嗅葉、中心体およびこれらを囲む神経叢からなる。本研究では、ミツバチ、トノサマバッタ、ワモンゴキブリ等行動様式の異なる昆虫の脳を連続顕微鏡写真から立体構築し、これらの主要な構造について検討した。嗅葉、中心体は種を越えて類似の形態を示した。ただし、嗅覚を諸行動の手がかりとするワモンゴキブリ、ミツバチでは他の昆虫に比べ嗅葉が発達していた。キノコ体の構造は明確な種間差を示した。ワモンゴキブリ、トノサマバッタ、ミツバチではキノコ体のサイズそのものはほぼ同じであった。しかしながら、ワモンゴキブリではその形態は単純なキノコ状であるのに対し、ミツバチではサブ構造からなる複雑に入り組んだ形態を示した。これは、脊椎動物の脳が基本的構築は同じでありながら、進化過程でより複雑な形態に変化することに似ている。昆虫についても、ワモンゴキブリでは摂食行動、配偶行動が化学刺激、フェロモンでステレオタイプに解発され、彼等は戻るべき巣も持たない。他方、ミツバチの行動には、蜜源の花の色学習や形態学習、餌場と巣のコースの学習記憶持等高次なものが多い。ミツバチのキノコ体の構造的複雑さは、より高次の脳機能を反映している可能性がある。これら脳構造の微細構造レベルでの研究は現在継続中であるが、ゴキブリの脳のニューロン構築はミツバチのそれに比べ単純である感触を得ている。
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Research Products
(1 results)