1998 Fiscal Year Annual Research Report
新しい分子マーカーを用いた後生動物の系統関係の解析
Project/Area Number |
08454275
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上島 励 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (20241771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深津 武馬 通産省工業技術院, 生命工学工業研究所, 研究員
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Keywords | ミトコンドリアDNA / ゲノム構造 / 後生動物 / 分子進化 / 系統 / 軟体動物 |
Research Abstract |
後鰓類は、腹足綱の一大分類群で、伝統的な分類体系では独立の亜綱に位置づけられている。しかし、近年の形態データや分子データを用いた解析では、後鰓類の単系統性は支持されていない。そこで、後鰓類の主要な上位分類、後鰓類の姉妹群とされている有肺類、異旋類について、mtDNAの遺伝子配置を決定し、そのデータに基づいて分岐分類学的な解析を行った。その結果、後鰓類は他の分類群にはない派生的な遺伝子配置を共有しており、単系統群であることが確認された。今回見出された特異な遺伝子配置は、現時点で知られている後鰓類の唯一の共有派生形質となる。 一方、上記の研究の過程で、マイマイ上科内においても遺伝子配置が変化していることが分かったので、マイマイ類の主要な科について部分的な遺伝子配置を決定し、その系統解析を行った。まず、最初に、塩基置換速度が遅いと言われているtRNA遺伝子の塩基配列データを用いて通常の分子系統解析を行ったところ、塩基置換が飽和しており、信頼性のある解析結果は全く得られなかった。そこで、柄眼目の別の上科を外群として、遺伝子配置データについて分岐分類学的解析を行ったところ、ナンバンマイマイ科は単系統群ではないことが明確に示された。 これらの結果から、塩基配列データを用いた通常の分子系統解析では解析が困難な状況(塩基置換が飽和していたり、複数の分類群がほぼ同じ時期に分岐したような場合)においても、遺伝子配置を指標とした系統解析では系統関係を明らかにすることが可能であり、そのような状況ではむしろ通常の分子系統解析よりも優れていることが分かった。また、遺伝子配置を用いた系統解析は、亜綱や上目などの上位分類群のみならず、科、属レベルの解析にも適用できることが分かり、遺伝子配置に変化が生じていれば、様々な分類階級での解析に使えることも分かった。
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