1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08455005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 耕三 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (00232439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 康之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (00225070)
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Keywords | 電気複屈折 / π共役系高分子 / 導電性高分子 / 分子内電気伝導 / 高分子主鎖形態 / キャリア拡散 |
Research Abstract |
共役系高分子をはじめとする電子・光機能性高分子の電気伝導機構に関する研究は、従来主として固体バルク状態で行われてきたが、アモルファス域と結晶域が互いに入り混じった複雑な高次構造をとる固体中では、分子内と分子間のキャリア移動を明確に区別することは困難である。そこで、我々は可溶性の共役系高分子を用い、絶縁性の有機溶媒中に溶かし、分子分散させることにより、分子間伝導を完全に抑制することを考えた。このとき高分子一本鎖に固有な、すなわち高分子の一次元性を顕著に反映する分子内キャリア伝導のみを溶液の誘電性の形で検出することが可能となる。本研究では、新しい誘電緩和スペクトロスコピーとしての電気複屈折緩和法を用いて、特に高分子主鎖形態と分子内キャリア移動との密接な関係を明らかにすることを目指している。 本年度は、特に、数百mHz、数十MHzという極めて広い周波数帯域にわたり測定が可能な電気複屈折緩和測定システムの開発を行い、その測定手法を代表的な可溶性の共役系高分子であるポリ(3-ヘキシルナチオフェン)に適用し、これまで我々の測定により明らかになっている2種類の分子内キャリア伝導機構に関する詳細な知見を得ることを試みた。低周波側に見られる緩和はキャリアが高分子上に存在する共役構造の欠陥を越えながら高分子全長程度を拡散するために生じるモードであるのに対して、高周波側に存在する綾和はこうした欠陥にはさまれたローカルな領域をキャリアが拡散するために生じるモードであり、その拡散定数は他の導電性高分子の固体状態において観測されているポーラロンの拡散定数と同程度であった。このように2種類のキャリア拡散機構が存在するのは1次元系における強い欠陥効果であると考えられる。
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[Publications] J.Oizumi et al.: "Electric birefringence relaxation spectroscopy of linear micelles in aqueous cetyltrimethylammonium bromide solutions with sodium salicylate" Journal of Chemical Physics. 104. 9137-9141 (1996)
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[Publications] S.Tanaka et al.: "Kinetic stndy on the early stage of the crystallization process of two forms of lysozyme crystals by photon correlation spectroscopy" Journal of Cristal Growth. 168. 44-49 (1996)