1997 Fiscal Year Annual Research Report
分子オーダーの流体潤滑膜のレイアリング現象に関する研究
Project/Area Number |
08455078
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 孝久 東京大学, 大学院・工学系研究所, 助教授 (60152716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 勝己 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (20134471)
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Keywords | 分子レイアリング / トライボロジー / 弾性流体潤滑 / 超薄液体膜 / 表面力 |
Research Abstract |
本研究は,分子オーダーの流体潤滑膜におけるレイアリング現象につい,その発生の要因を実験と理論との両面から解明することを目的に実施されたものである. 通常,流体潤滑膜といえば流体の粘性力が支配的でありねレイノルズ方程式を解いて求められる圧力は,この流体粘性力に対抗する力である.ところが,2面間の距離が小さくなり,数ナノメータ或いはそれ以下になると,固体表面間に働くvan der Waals力および溶媒和力の影響が無視できなくなる.van der Waals力は2面間の距離が近づくと指数関数的に増加する引力であり,表面が平面,球面,円筒面などの様々な形状の場合には詳細に研究されている.一方で,溶媒和力は2面間に存在する流体分子の密度に依存する力であり,斥力と引力とを繰り返す周期的な力である.この周期はほぼ流体分子の大きさであり,表面距離の減少とともに振幅は指数関数的に増加する. ここでは,このレイアリング現象が微小な機械要素のしゅう動にどのような影響を与えるのかについて明らかにし,超薄膜流体潤滑現象の実現への寄与について,明確にすることを主目的として実施された.その結果,以下のことが明かになった. 1)膜厚が液体分子直径の10倍以下程度になると従来の理論からずれ始め,膜厚の離散化が起こる. 2)膜厚の離散化はほぼ介在液体分子直径の間隔,または構造力の周期と同じ間隔で起こる. 3)構造力は滑りがある場合でも静的な場合とほぼ同じ大きさを示す. 4)構造力は滑り速度に依存しない. 5)ノルマルヘキサデカンでは膜厚の離散化は観察されない. 本研究結果が分子オーダーの流体潤滑膜のレイアリング現象の解明に大いに貢献するものと確信する.
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 松岡広成, 加藤孝久: "分子オーダーの流体潤滑膜厚さの離散値化に関する研究" 日本機械学会論文集(C). 63巻、606号. 537-542 (1997)
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[Publications] H.Matsuoka and T.Kato: "An Ultrathin Liquid Film Lubrication Theory-Calculation Method of Solvation Pressure and Its Application to the EHL Problem" ASME Trans,Journal of Tribology. Vol.119,No.1. 217-226 (1997)
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[Publications] 松岡広成, 加藤孝久: "分子オーダの弾性流体潤滑理論(液体の構造圧力の影響)" トライボロジスト. 42巻,1号. 68-75 (1997)
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[Publications] H.Matsuoka and T.Kato: "Discrete Nature of Ultrathin Lubrication Film between Mica Surfaces" ASME Trans,Journal of Tribology. Vol.118,No.4. 832-838 (1996)
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[Publications] 松岡広成, 加藤孝久: "分子オーダの流体潤滑膜厚さの測定" トライボロジスト. 41巻,5号. 427-434 (1996)