1996 Fiscal Year Annual Research Report
原子価制御を基礎とする高品位ガラスの低環境負荷生産技術
Project/Area Number |
08455305
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Research Institution | TOYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
今川 宏 東洋大学, 工学部, 教授 (80184810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西井 準治 大阪工業技術研究所, 光機能材料部, 主任研究官
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Keywords | ガラス / 低環境負荷 / 生産技術 / 酸化還元反応 / 清澄反応 / 原子価 / CO_2 / SO_2 |
Research Abstract |
{目的}複数の原子価可変イオンを含む実用ガラスの生産において,酸化還元状態を安定に制御する技術および環境中へのSO_2,CO_2排出量抑制のための基礎研究として行った.代表例としてFe^<2+>イオンとCe^<3+>イオンの光吸収帯を利用した紫外線防護・省エネルギー目的の紫外線・熱線カットガラスを取り上げた. {実験}基本組成16Na_2O・10CaO・74SiO_2のガラスにFe_2O_3,Ce_2O_3,Na_2SO_4(清澄剤)を添加したガラスを溶融・調製し,本補助金による「高純度雰囲気高温光学セル」中で雰囲気圧を所定値(1,10,30,100kPa)に制御しながら1450℃まで加熱し放出ガスおよび泡の発生頻度を測定した.既存の超高真空加熱炉でも同じ測定を行い比較した.またガラス試料の吸収スペクトルを測定した. {結果と考察}(1)Na_2SO_4の清澄作用は熱分解で発生するSO_2とO_2ガスによる.Ce_2O_3を加えたガラスではSO_2発生が増加し,かつSO_2発生が終了した後,高温でO_2ガスが発生することが初めて確認された. Na_2SO_4→Na_2O+SO_2+1/2O_2 (1),Ce_2O_3+1/2O_2(g)→2CeO_2 (2) このような振舞いを(1),(2)に対する最近の熱力学データで解析した.比較的低温でSO_2の発生が増加するのはCe_2O_3が反応(2)で示すように還元剤として働くためであり,より高温の1350℃付近で酸素が放出されるのはCeO_2も酸素を放出し始めるからである.(2)熱線遮断に関して,Na_2SO_4-Fe_2O_3二成分添加系とNa_2SO_4-Fe_2O_3-Ce_2O_3三成分添加系の近赤外線吸収係数を測定した.後者では吸収が半減することを確認した.これも冷却過程においてFe^<2+>+Ce^<4+>→Ce^<3+>+Fe^<3+>の反応が起こるという熱力学の予測と一致する(3)雰囲気圧を下げると泡が低温で発生し破裂・消滅するため低温生産が可能になりCo_2排出量が抑制される.「高純度雰囲気高温光学セル」による観測で雰囲気圧と泡が消滅する温度の関係が従来より精密に観測された.以上,本研究で高品位ガラスの低環境負荷生産技術に関して多くの基礎的知見が得られた.
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