1997 Fiscal Year Annual Research Report
高速に熱応答するグラフト型イソプロピルアクリルアミド系ゲルの分子設計
Project/Area Number |
08455458
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
岡野 光夫 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (00130237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 明彦 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (40266820)
青柳 隆夫 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40277132)
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Keywords | 温度応答性ゲル / グラフト型ゲル / ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) / 高速収縮 / ポリエチレングリコール / 疎水性凝集 / 水の透過経路 |
Research Abstract |
ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)は32℃より低温で水に溶解し、一方、この温度以上では脱水和してポリマー鎖が凝集・沈殿する温度応答性高分子である。本研究では高速に温度変化に応答する高分子ゲルを分子の構築構造を制御して合成し、その温度応答挙動を解析するとともに薬物放出デバイスとしての応用を検討している。今年度は親水性のポリエチレングリコール(PEG)をグラフト側鎖として有するグラフト型ゲルを合成し、温度変化に応答したゲルの膨潤・収縮挙動を解析した。PEGの末端水酸基とアクリル酸クロリドとを反応させ、PEGマクロモノマーを調製した。これとIPAAmとを架橋剤の存在下水中でラジカル共重合し、種々PEG含量の異なるPEGグラフト型PIPAAmゲルを調整した。このゲルの温度に応答した収縮挙動をその膨潤変化、ならびに、示左走査熱量分析(DSC)から解析した。PEGグラフト型ゲルは親水性の側鎖を有するにも関わらず、ゲルの相転移温度はPIPAAmゲルのそれとほとんど変化しなかった。さらに10℃で膨潤したゲルを50℃にしたとき、ゲルの素早い収縮が観察され、PEG含量が11wt%でもっとも早い収縮が観察された。収縮時に形成される非透過性のスキン層内部にPEGグラフト鎖が親水性のチャンネルを形成し、このチャンネルを介して内部の水分子を一気に放出するものと考えられた。このPEGグラフト型ゲルの収縮挙動を親水性のアクリル酸を共重合したPIPAAmゲルと比較して検討し、PIPAAm主鎖の連鎖長を維持してゲルの温度変化に応答した凝集力を保持した構造の特徴を議論した。次年度以降は、グラフト型ゲルの高速温度応答性に与えるグラフト側鎖の親水性・疎水性のバランスに着目して検討を加えるとともに、内包した薬物の放出に与えるゲルの分子構築構造の効果を詳細に検討していく。
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[Publications] 金子祐三: "温度変化に素早く収縮応答するグラフトゲルによる新しいパルス型薬物放出制御" 人工臓器. 26. 238-243 (1997)
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[Publications] 金子祐三: "温度応答性の早い高分子ゲルによる新しいパルス型薬物放出制御" 薬理と臨床. 7. 1295-1299 (1997)
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[Publications] 金子祐三: "ポリエチレングリコールをグラフトした新規な温度応答性高分子ゲルによる膨潤・収縮変化の加速とパルス型薬物放出" 化学工学論文集. (in press). (1998)