1997 Fiscal Year Annual Research Report
農林地生態系の地球化学的物質循環速度調整能とそのモデル化
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08456038
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
波多野 隆介 北海道大学, 農学部, 教授 (40156344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 夕美子 北海道大学, 農学部・附属苫小牧演習林, 教務職員 (60221397)
倉持 寛太 北海道大学, 農学部, 助手 (00225252)
原口 昭 北海道大学, 農学部, 講師 (50271630)
佐藤 冬樹 北海道大学, 農学部・附属手塩演習林, 助教授 (20187230)
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Keywords | 物質循環 / 生態系 / 酸性雨 / イオン交換 / 硝酸化成 / 二酸化炭素 / 土壌呼吸 / 純一次生産 |
Research Abstract |
1)森林生態系に流入する酸は、植物系を通過する間に独自の酸環境に調整された。いづれの地域の広葉樹も、酸性雨をpH5.5以上に中和した。しかし針葉樹では、樹種により異なり、アカエゾマツではpH3まで低下する場合も見られ、独自の酸性環境を作り出していた。ただし、いづれの樹種も酸の中和のために主にKを交換放出していた。土壌浸透水のpHはいづれも降雨より高かった。ただしO層やA層のpHは針葉樹のみならず広葉樹でも5以下に低下する場合が多かった。土壌への主な酸供給要因として針葉樹では有機酸が、広葉樹では硝酸化成が上げられた。ただし、B層以下の層では土壌の母材独自の違いが強くなり、塩基性の蛇紋岩や未熟火山放出物由来の土壌ではpHは6前後に高まり、塩基の少ない第三紀泥岩ではpHは依然として5前後であった。河川水のpHは土壌のpHはり高かったが、地域により異なった。酸の中和のために土壌溶液に放出された塩基のうち、樹木は主にCaとKを吸収した。余剰塩基の主体は降雨由来のNaと、土壌由来のCa、Mgであり、それらは土壌植物由来の有機酸やHCO_3、降雨由来のClを伴なって溶脱していき、河川水質を形成した。 2)森林生態系において大気、植物、土壌の各系への流入と流出フローを測定し、生態系内の炭素収支を見積もるモデルを構築した。火山放出物未熟土の落葉広葉樹林では、降雨と乾性沈着で年間47kgC/haの炭素が供給されていたが、樹木の純一次生産により固定された炭素はそれより圧倒的に大きく7605kgC/haに達していた。このうち、落葉落枝と根の枯死で1620kgC/haが土壌に供給される。さらに林内雨と樹乾流で59kgC/haが供給されていた。土壌呼吸量は5930kgC/haであったが、その70%は根呼吸によるものと認められ、土壌からの放出量は1779kgC/haであり、供給量とほぼバランスしていた。また植物が吸収するCO2は純一次生産分と根呼吸分を合わせた11756kgC/haであるが、土壌呼吸の69%は植物に再固定されており、大気からのCO2流入分は7664kgC/haであった。土壌呼吸のうち1838kg/haは大気に放出されるので、森林が年間正味吸収したCO2量は5826kgC/haであった。また我が国のさまざまな森林生態系での測定結果を循環モデルて解析したところ、年間1000から10000kgC/haのCO2が正味吸収されていると見積られた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 江口定夫: "落葉広葉樹林土壌からのCO2フラックスの日変化と植生に対するCO2供給源としての重要性" 日本土壌肥料学雑誌. 68・2. 138-147 (1997)
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[Publications] Tanaka,Y.: "Evaporation and bulk Transfer Coefficients on a Forest Floor during times of Leaf-shedding." Journal of Agricultura Meteorology. 53・2. 119-129 (1997)
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[Publications] Hatano,R.他: "Emission of N20 from clayey aquic soil cultivated with Onion plants." plant Nutrition for sustainable food production and environment Kluwer Academic publishers, Dordrecht.555-556 (1997)
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[Publications] Hatano,R.他: "Using fractal dimensions of stained flow patterns in clay soils to predict bypass folw." Fractals in Soil Science, CRCpress, Boca Raton ; Advances in Soil Science. 262-288 (1998)