1998 Fiscal Year Annual Research Report
窒素安定同位体比法を用いた多摩川の窒素汚染と浄化作用に関する研究
Project/Area Number |
08456041
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Research Institution | Tokyo University of Agriculuture |
Principal Investigator |
熊澤 喜久雄 東京農業大学, 農学部, 教授 (00011825)
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Keywords | 窒素汚染 / δ^<15>N / 浅川 / 南浅川 / 湧水 / 多摩川 |
Research Abstract |
本研究の目的は窒素安定同位体比法を用いて多摩川の窒素汚染源を明らかにし、その自然的、人為的浄化過程の意義を明確にするところにあるが、平成8年度、9年度に続いて本年度は多摩川の支流の一つである浅川と、多摩川流域の湧水について調査を行い、無機イオン濃度および硝酸態窒素のδ^<15>N値を測定した。 (1) 浅川上流部の硝酸態窒素濃度は1.16〜1.52mgL^<-1>、δ^<15>N値は+1.16〜+2.34‰で雨水、土壌有機物の分解に由来する窒素であると推定される。 (2) 流下するに従って浅川の硝酸態窒素濃度は2.89mgL^<-1>、δ^<15>N値は+8.29‰まで増加し生活雑排水由来の窒素の流入が示唆された。 (3) 南浅川合流後の浅川の硝酸態窒素濃度は4.42mgL^<-1>まで上昇したがδ^<15>N値は合流前と変化がなく、浅川の窒素汚染には南浅川からの流入が大きく関与していることが明らかとなった。 (4) 多摩川上流右岸の湧水の硝酸態窒素濃度は0.48〜14,1mgL^<-1>、δ^<15>N値は+0.53〜+6.84‰で多摩段丘上層部よりの湧水は硝酸態窒素濃度が低く、またδ^<15>N値が低いことから降雨や森林、土壌表層水などに由来したものであると推定される。段丘下層部よりの湧水は硝酸態窒素濃度に関係なくδ^<15>N値が大きい。これは表層土壌中に長期にわたり集積した土壌有機物の分解に由来するものであると推定された。 (5) 東京都のベッドタウンに位置する中流右岸の段丘下部の湧水の硝酸態窒素濃度は0.12〜9.62mgL^<-1>と広範囲であるが、δ^<15>N値は+7.30〜+8.21‰でその上部の農業的土地利用状況を反映しており、また生活雑排水の影響も現れていると考えられる。 (6) 中流左岸に位置する都立農業高校農場内の湧水の硝酸態窒素濃度は2.45〜9.69mgL^<-1>で芦田を除く3地点は9mgL^<-1>程度、δ^<15>N値は+6.90〜+7.82‰であった。芦田を流下するにつれてこれらの値は2.45mgL^<-1>、+13.2‰になることから芦田による窒素除去能力が示唆された。
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