1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08456077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 雅一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (10144346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蔵治 光一郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (90282566)
執印 康裕 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (60221305)
芝野 博文 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00143412)
太田 猛彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (50134797)
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Keywords | 水質 / 物質収支 / 水収支 / 雨水流出機構 / PH |
Research Abstract |
本研究は、雨量、流出量が連続的に測定され、斜面の土壌水分、斜面下端の地下水位が詳細に計測されている東京大学千葉演習林袋山沢の南谷、北谷の隣接する2流域において、水質計測をおこない、A.ヒノキ、スギ壮齢林に覆われた流域の物質収支を明らかにし、それを踏まえて、B.流域内での水質変化を追跡することを目的としている。流域内の水質形成は、1)雨水が樹冠を通過する過程、2)土壌浸透の過程、3)斜面下部の飽和地下水帯に滞留する過程、4)地下水が湧出して渓流を流下する過程で生起するので、それぞれの過程での水質変化を追跡する。本年は、雨水、林内雨、地下水、渓流水の水質分析資料が1年分蓄積されたので、Cl^-、NO_3^-、SO_4^<2->、K^+、Na^+、Ca^<2+>、Mg^+、SiO_2について2流域の物質収支が得られた。2流域の差異はNO_3^-を除いて小さい結果であった。が2流域で異なることは、渓流沿いに存在する飽和地下水帯が一方の流域では通年存在しているのに対し、他方は無降雨が続く渇水期に消滅することに対応して、飽和帯で起きる脱窒が異なることによると解析された。 また本年度は、森林が水質形成に与える影響の一つとして、有機物分解などによる大気に比べ著しく高い土壌中二酸化炭素濃度が浸透過程の水質形成に与える影響を実験的に明らかにする研究に着手した。豊浦標準砂を詰めた2本のカラムを用い、一方を森林土壌中で計測される二酸化炭素濃度の上限と考えられる10%に制御し、他方を大気濃度下においた浸透実験を進めた。この結果、高い土壌中二酸化炭素のカラムは、SiO_2、Ca^<2+>、Mg^+の流出が著しく増加し、植生が土壌中二酸化炭素濃度の上昇を通して、鉱物の風化に影響を与え、結果として流出水の水質に影響を与えているというプロセスを新たに確認すことになった。これらの成果は、いずれも学会誌投稿準備中である。
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