1996 Fiscal Year Annual Research Report
サルキメラCD4分子発現細胞でのHIV/SIV誘導シンシチウム形成機序の解析
Project/Area Number |
08456164
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | 国立予防衛生研究所 |
Principal Investigator |
巽 正志 国立予防衛生研究所, 獣医科学部, 主任研究官 (00133629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪井 弘治 国立予防衛生研究所, エイズ研究センター, 主任研究官 (60260270)
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Keywords | マカク属サル / CD4 / HIV-1 / Entry / Syncytium |
Research Abstract |
本年度は良質なマカク属サルリンパ球cDNAライブラリーを構築し得た。このライブラリーより各種サルCD4遺伝子をクローニングし、これらの遺伝子のコード全領域の塩基配列を決定した。これらクローニングした遺伝子を用いて、CD4遺伝子では哺乳動物細胞でのStableな各種サルCD4発現形質転換細胞の樹立に成功し、in vitro HIV/SIV感染系における、HIV-1に対する感受性とCD4遺伝子の構造の関連についての解析結果が得られた。その成績から、マカク属サルおよびアフリカミドリザルCD4分子はヒトCD4分子と比較してHIV-1gp120分子の結合部位と想定されているCDR領域のアミノ酸構成の置換が認められたのにも拘わらず、ヒト株化細胞HeLaに発現したときは、HIV-1の感染が成立したことことから、HIV-1のEntryに関与するCD4分子の構成には当初考えられていたよりFlexibilityがあることが判明した。また感染成立は全てのマカク属サルとアフリカミドリザルCD4分子発現細胞で認められたが、Syncytium形成がヒト、ミドリおよびニホンザルCD4分子発現細胞のみで観察されたことから、ウイルスの侵入、およびその後に引き続く感染成立とSyncytium形成過程は異なる過程で生じていることが判明した。Syncytium形成の有無によるマカク属サルCD4分子間のアミノ酸構成の相違はCD4分子のV2からV4ドメインにおける数個のアミノ酸の違いに因るものと考えられた。この部位が限定されれば、ヒトCD4分子そのものはgp120分子の様に変異をしないので、新たなウイルス増殖抑制戦略の標的となる可能性が期待される。また一連のCD4分子発現細胞の樹立とそれらのHIV-1に対する感受性の解析過程で、ヒトCD4分子をサルおよびマウス株化細胞に発現したときは、HIV-1の結合はあるものの感染成立に至らないことから、HIV-1のEntryにはCD4分子以外のヒト細胞由来のCofactyor(s)が必要とされることが判明した。 今後、HIV-1感染成立におけるCD4分子以外のヒト細胞由来のCofactorの検索を本研究で樹立したヒトCD4分子発現サル細胞にヒト株化細胞HeLa由来のcDNAライブラリーの一過性発現系と耐性遺伝子をenv領域に組み込んだ組み換えHIV-1ウイルスによる発現クローニングの戦略で、該当Coafctorの同定分離が急務となろう。また各種サルCD4分子発現細胞/HIV-1感染系で認められた、HIV-1 Provirusの組み込みと感染細胞のSyncytium形成の剥離に関与するサルCD4分子V2からV4ドメインのアミノ酸構成を部位特異的突然変異法により同定することが求められる。今後、これら形質転換細胞を用いたSIV/HIV感染系におけるCD4分子の役割のより詳細な解析を通じてマカク属サル類におけるHIV感染発症系の確立と解明に寄与したい。
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[Publications] Yabe,M.,Matsuura,Y.and Tatsumi,M.: "Molecular cloning and expression of cynomolgus monkey IL-2 cDNA by the baculovirus system." Int.Arches.Immunol.Allergy. (in press). (1997)