1996 Fiscal Year Annual Research Report
生物界におけるハロゲン化酵素の機能とハロゲン循環系
Project/Area Number |
08456168
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
伊藤 伸哉 福井大学, 工学部, 助教授 (90213066)
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Keywords | ブロモホルム / 臭化メチル / ブロモペルオキシダーゼ / SAM-ハライドイオンメチル転移酵素 / 海藻 / 海洋プランクトン / アレロケミカル |
Research Abstract |
改良型のブロモホルム蒸散装置を使用して、海洋環境におけるブロモホルム類のアレロパシー作用についての実験を行った。その結果ブロモホルムに、ケイ藻等の海洋微細藻類に対する付着防止作用が認められた。このデータは、海洋環境における低沸点臭化物の生理的意義を初めて示したものである。また海藻の一部がブロモペルオキシダーゼを著量に含有する理由についても、この実験結果よりブロモホルム類を合成し、細胞表面に他の藻類が付着するのを防ぐ機能を有することが推定された。 他方、モノハロメタンを生成する海洋プランクトン由来のSAM-ハライドイオンメチル転移酵素については、酵素が極めて不安定であるために、その精製は進展しなかった。そこで、種々のパブロバ属プランクトンについて含有する酵素の安定性を調査した結果、P.pinguisの酵素が比較的安定であること、さらに緩衝溶液中にBr^-やI^-を共存させることにより著しく安定化することが明らかになった。また酵素精製においてS-アデノシルホモシステインをリガンドとするとアフィニティークロマトグラフィーが有効であることが判明した。今後、精製の諸条件を検討し、本酵素の完全精製を行う。 本年度は、さらに海藻および海洋植物プランクトン由来のブロモホルムおよびモノハロメタンの分布・放出量についてデータをまとめ、これらの低沸点ハロゲン化合物の海洋から大気への循環量について試算を行った。その結果、海洋プランクトンから生成する臭化メチルについては、大気化学的な試算と比較的良好な一致が認められた。
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[Publications] N.Itoh et al.: "Bromoperoxidase in Corallina pilulifera is regulated by its vanadate content" Phytochemistry. 42. 277-281 (1996)
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[Publications] N.Itoh et al.: "Formation and emission of monohalome thanes from marine algae" Phytochemistry. (印刷中). (1997)
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[Publications] 伊藤伸哉: "ハロゲン化酵素の機能とその応用" 酵素工学ニュース. 35. 13-18 (1996)
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[Publications] 伊藤伸哉: "蛋白質核酸酵素41巻生物界におけるハロゲン化酵素の多様性とその働き" 共立出版, 11 (1996)