1998 Fiscal Year Annual Research Report
肢形態形成に関与する遺伝子の発生学・実験奇形学的解析
Project/Area Number |
08457006
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
安田 峯生 広島大学, 医学部, 教授 (50079688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 浩二 広島大学, 医学部, 助手 (80183945)
山下 敬介 広島大学, 医学部, 助教授 (40166666)
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Keywords | 肢形態形成 / パッド / メロメリアマウス / En-1遺伝子 / Wnt-7a遺伝子 / 背腹軸 / 外胚葉性頂提 / レチノイン酸 |
Research Abstract |
マウスの掌蹠にはパッドとよばれる特徴ある構造が見られる。このパッドのパターンは変異遺伝子や胎生期環境の影響を受けて変化することがある。四肢奇形ミュータント系メロメリア(meromelia,mem)マウスでは,パッドの観察により,四肢の腹側構造が背側化していることが明らかになった。発生途上のメロメリア肢芽について,いくつかの遺伝子のプローブを用い,全載インシツハイブリダイゼーション法で検索したところ,肢の腹側化に働くとされるEn-1遺伝子の発現域は縮小し,背側化に働くとされるWnt-7aの発現域は肢芽の先端を越えて腹側に拡大していた。肢の伸長に重要な肢芽先端の外胚葉性頂堤(AER)の指標となるFgf4,Fgf-8の発現は,初期には正常な位置に発現していた。これまでAERはEn-1とWnt-7aの発現域の境界に形成されると考えられてきたが,上記の所見はこの定説に疑問を投げかけ,AERの形成にはEn-1,Wnt-7a以外の因子が関与している可能性を示唆するものである。一方,妊娠12.5日のJcl:ICRマウスにレチノイン酸を投与して,妊娠末期の胎仔を観察すると,指間パッドの過剰や足根パッドの欠如などの異常が誘発された。プロモデオキシウリジンの取り込みを指標に検索したところ,パッドはその予定部域の間葉の増殖により形成されることが明らかとなった。レチノイン酸投与により最も高頻度に見られる腓側足根パッドの欠如について,細胞増殖に併せてTUNEL法で細胞死を調べたところ,この異常はパッド原基での細胞死によるものではなく,細胞増殖の低下によることが明らかとなった。この異常について,全載インシツハイブリダイゼーション法では,これまでのところ特記すべき遺伝子発現の変化は認められていない。
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[Publications] 津金瑞代: "皮膚紋理による異常検出と四肢背腹軸決定" 解剖学雑誌. 73・6. 699-708 (1998)
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[Publications] Mori,N.: "Cytokinetics of pad formation in mouse embryos and its disturbance by retinoic acid." Teratology. 57・2. 106- (1998)
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[Publications] Tsugane,M.H.: "Mutant mice“meromelia(mem)"expressing dorsalisation of ventral structures of the limb." Teratology. 57・2. 113- (1998)