1997 Fiscal Year Annual Research Report
環境適応反応の中枢神経機構における脳内サイトカインの役割
Project/Area Number |
08457021
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片渕 俊彦 九州大学, 医学部, 講師 (80177401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武 幸子 九州大学, 医学部, 助手 (80253425)
堀 哲郎 九州大学, 医学部, 教授 (00022814)
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Keywords | インターロイキン1-β / 拘束ストレス / アンチセンスオリゴDNA / 定量的PCR法 / 暑熱暴露 / 寒冷暴露 / インターロイキン-6 / 興奮性シナプス電流 |
Research Abstract |
本研究の目的は、環境適応反応の中枢神経機構における情報伝達物質としての脳内サイトカインの重要性について、(1)脳内サイトカイン産生系に対する環境ストレスの影響、(2)脳内サイトカインによって発現する環境ストレス適応反応(体温調節、免疫機能)の神経生理学的解析、およびび(3)脳内サイトカインの中枢神経細胞に対する作用機序の細胞レベルでの解析、などの点について検討することである。 本年度は、次の4点を明らかにした。(1)ラットに拘束ストレスを与え、経時的に脳を取りだし、海馬、視床下部、および下垂体のIL-1βmRNAを定量的PCR法にて測定したところ、拘束開始後30分から、視床下部および下垂体でIL-1βmRNAの発現が増加することを明らかにした。(2)マウスに1時間の拘束ストレスを加えたときの脾臓ナチュラルキラー細胞活性の低下が、脳室内IL-1β中和抗体の前投与によって阻害されることから、拘束ストレスによる細胞性免疫抑制機序の一つとして、脳内IL-1βの産生があることを明らかにした。(3)ラットc-fos蛋白のmRNAにおいて開始コドン領域を含む15塩基に対してホスホロチオエイト化したアンチセンスオリゴDNA(AOD)をラットの内側視索前野(MPO)に微量注入し、2時間の暑熱(室温33℃)、および寒冷(5℃)暴露したところ、センスオリゴDNA投与群と比較して、暑熱暴露による体温の上昇が抑制され、また寒冷暴露による体温低下がさらに強く起こることを明らかにした。(4)マウス海馬のスライス標本を用い、スライスパッチ法によるCA1領域錐体細胞の興奮性シナプス電流(EPSC)を記録しながら、マウスIL-6を潅流投与すると、EPSCの振幅が減少することを明らかにした。さらに、テトロドトキシン投与で得られるミニチュアEPSCに対しても、IL-6が同様の作用を持つことを明らかにした。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] Ota,K.: "The AV3V neurons which send axons to hypothalamic nuclei respond to the systemic injection of IL-1 β." Am.J.Physiol.272. R532-R540 (1997)
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[Publications] Li,A.J.: "Interleukin-6 inhibits long-term potentiation in rat hippocampal slices." Brain Res.748. 30-38 (1997)
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[Publications] Katafuchi,T.: "Differential effects of tumor necrosis factor-α and-β on the rat ventromedial hypothalamic neurons in vitro." Am.J.Physiol.272. R1966-R1971 (1997)
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[Publications] Hori,T.: "Cell biology and the functions of thermosensitive neurons in the brain." Prog.Brain Res.115. 9-23 (1997)
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[Publications] Katafuchi,T.: "Sequential relationship between actions of CRF and PGE2 in the brain on splenic sympathetic nerve activity in rats." J.Auton.Nerv.Syst.67. 200-206 (1997)
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[Publications] 片渕俊彦: "精神神経系とNK細胞" 炎症と免疫. 5. 51-60 (1997)
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[Publications] 片渕俊彦: "発熱とサイトカイン" Clinical Neuroscience. 16(in press). (1997)
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[Publications] 片渕俊彦: "インターフェロン-その研究の歩みと臨床応用への可能性-" ライフ・サイエンス(in press), (1998)
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[Publications] 片渕俊彦: "内科学のトピックス-進歩と展望" 研究社印刷(in press), (1998)