Research Abstract |
本年度は,肺末梢型扁平上皮癌(SCC)および腺扁平上皮癌(ASC)の前癌病変につき,SCC16例とASC11例,計27症例の非腫瘍部を組織学的に検索するとともに,腫瘍部および非腫瘍部におけるcytokeratin, surfactant apoprotein, CEA, p53, c-erbB-2, PCNA, MIB-1抗原を免疫組織化学的に染色した.その結果,(1)間質繊維化がびまん性のもの6例(22.2%), patchyなもの15例(55.6%)であり,SCCとASCでは差を認めなかった.(2)肺胞細気管支上皮過形成(AH)が15例(55.6%)にみられ,SCC症例において顕著であったが,atypical, adenomatous hyperplasia (AAH)はこの中の8例に認められ,SCCとASCで差がなかった.(3)さらに,AAHの一部に扁平上皮化生を伴う「AAH様病変」がSCCで1例,ASCで2例の計3例(11.1%)にみられ,化生の一部には異形成が認められた.(4)また,小気管支・細気管支に中枢型扁平上皮癌の前癌病変と同様な扁平上皮化生一異形成を示すものがSCC症例のみに3例(SCC例の18.8%)あった.(5)Surfactant apoproteinの発現がAHでは増加していたが,AAHでは低下した.CEAはAHでも一部に発現していたが,AAHではより顕著に発現した.p53は1例のAAH様病変で陽性,他では陰性であった.c-erbB-2は全例で陰性であった.PCNAとMIB-1はAH, AAH, AAH様病変の順にlabeling indexの上昇がみられた.以上より,肺末梢型のSCCとASCはAAH様病変を前癌病変とすること,また,一部のSCCは中枢型と同様の小・細気管支病変から起こることが示唆された. 肺小細胞癌についてはcomposite tumorの遺伝子異常からみたクローン性解析を開始し,大細胞癌については組織学的脱分化の観点から解析を進めている.
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