1997 Fiscal Year Annual Research Report
循環器疾患の発症予防を目的とした頸動脈硬化の進展度及びその関連要因の疫学的研究
Project/Area Number |
08457125
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
嶋本 喬 筑波大学, 社会医学系, 教授 (50143178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 明彦 大阪府立成人病センター, 集検I部, 診療主任
谷川 武 筑波大学, 社会医学系, 講師 (80227214)
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Keywords | 頸部エコー / 動脈硬化 / 地域住民 / 心筋梗塞 / 血漿フィブリノーゲン / リスクファクター / 疫学研究 |
Research Abstract |
地域において、脳梗塞や心筋梗塞等の動脈硬化性疾患のハイリスク者を早期発見し、疾病の発生予防に結びつけるために、臨床的検査である頸部エコーを、地域における循環器検診に導入した。 対象集団は東北農村(人口7千人)、四国農村(人口1.3万人)、関東農村(人口1.7万人)、大阪近郊M地区(人口2.1万人)の住民及び大阪事業所勤務者である。脳梗塞は東北農村で特に高率で、次いで四国農村、関東農村で大阪近郊M地区、大阪事業所勤務者は低率である。一方、虚血性心疾患は大阪事業所勤務者が比較的高率で、その他の地域集団では低率である。 それぞれの集団から50〜74歳男子1,236人(東北農村213人、四国農村302人、関東農村291人、大阪近郊M地区188人、大阪事業所勤務者242人)に対して、循環器検診時に頸動脈エコー検査を実施した。そして、集団間の頸部エコー所見の差を検討するとともに、各集団内において、従来の循環器疾患のリスクファクター(血圧、心電図,STT異常、眼底の高血圧・動脈硬化性変化、血清総コレステロール、喫煙、飲酒、糖尿病)加えて、新しいリスクファクターである血漿フィブリノーゲンとの関連を分析した。 その結果、頸部エコー所見で内膜、中膜複合体(IMC)の厚さが総頸動脈で1.5mm以上、膨大部から内頸動脈で2.0mm以上、又は多発性プラークが存在する者の割合は、他の集団に比べて東北農村で高かった。これはこの集団が血圧レベルが高く、脳卒中の発生率が高いことと対応している。次に、各集団を通じて、頸動脈硬化度はHDL-コレステロール値、喫煙、糖尿病と関連が認められ、総コレステロール値、飲酒との関連は、明らかでなかった。 一方、血漿フィブリノーゲンに関してはまず、心筋梗塞患者169名と、性、年齢をマッチさせた一般住民集団の中から、1対1で抽出した対照者に対し、フィビリノーゲンを測定し、心筋梗塞患者で血漿フィブリノーゲンが高値を示すことを確認した。次に健常人のコホート研究(大阪近郊M地区住民と大阪事業所勤務者40歳以上の男女、11,920人の3年間の追跡調査)により、血漿フィブリノーゲンの高値が従来の循環器疾患のリスクファクターとは独立に、虚血性心疾患の発生と関連することを示した。 以上の研究を通じて、頸動脈エコー検査が循環器疾患の発生を予測する上で有益であり、新しいスクリーニング検査としてさらに検討を進める必要性が示された。
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