Research Abstract |
今年度はACE遺伝子多型に加えて,HLA-DR遺伝子多型をDNAタイピングにより検討した.対象は92名のサルコイドーシス患者と201名の健常者である。まずDRB3遺伝子が増幅できるか否かで判断したDR52の頻度は,サルコイドーシスで70%,健常者で60%とサルコイドーシスで高い傾向にあったが,有意ではなかった.またDRBを増幅後,DR3,5,6,8に共通なβ鎖9-12アミノ酸に相当する塩基配列に対応するプローブ(SS01003,1005)とのhybridizationの有無で判定した,同塩基配列の頻度は,サルコイドーシスで65%,健常者で60%とやはり有無差を認めなかった.以上より,サルコイドーシスの疾患感受性遺伝子として,これまで報告されてきたRD52やそれと連鎖不平衡にある.DRB1の9-12アミノ酸部分の意義は認められなかった. 次に染色体DNAを抽出後,PCRでDRB1,DRB3遺伝子を増幅し,種々のプローブ(SSO)との結合パターンより,DRB1のタイピングを行った.その結果サルコイドーシスで有為に増加していたのは,DR1201,1407,0803であり,有意に減少していたのはDR1,1101などであった.サルコイドーシスではこれらのHLA-DRアロタイプがそれぞれ弱い疾患感受性を形成しているものと考えられた. 次いで健常者末梢血から単球を分離し,in vitroでIFN-g,G-CSF,GM-CSFなどのサイトカインと培養し,ACE遺伝子型ごとにACE産生量を比較した.しかし培養上清中のACE濃度,細胞内ACE活性いずれにも差を認めなかった.またT細胞を分離し,同様にin vitroでPPDやPHAで刺激し,培養上清中のIL-2や増殖能をACE遺伝子型ごとに比較したがやはり有意差を認めなかった.したがって現在のところ,炎症細胞のACE産生の相違が,サルコイドーシスの血清ACE活性の遺伝子型に基づく相違の原因になっているという仮説は証明されなかった.今後は検討の観点を変え,IL-4やIL-12を加えて培養しそれぞれTh2,Th1方向にT細胞を分化させて,そのACE産生能を検討する予定である.
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