1997 Fiscal Year Annual Research Report
成長ホルモン分泌に関与する情報伝達系とイオンチャネルに関する研究
Project/Area Number |
08457260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 直秀 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (90174680)
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Keywords | FS細胞 / カリウムチャネル / TEA / 4AP / Ba^<2+> |
Research Abstract |
下垂体濾泡星状細胞(FS細胞)は成長ホルモン分泌細胞などの下垂体前葉の支持細胞であると考えられてきた。しかし近年FS細胞が呑食能を有していることや分泌細胞に栄養を補給するなどFS細胞の新しい機能が明らかにされつつある。またIL-6などのサイトカインを分泌して分泌細胞からのホルモン放出を調節していることも報告されている。FS細胞はS100蛋白やglial fibrillary蛋白陽性など、神経系におけるグリア細胞様の性質を有している。今回FS細胞由来の樹立細胞であるTtT/GF細胞を用いてイオンチャネルの検討を行った。TtT/GF細胞は形態学的に(1)isolated round cell,(2)isolated spread cell,(3)contact spread cell,(4)contact round cellに分類された。電圧固定法で膜電流を調べるとisolated spread cellとcontact cell(round spreadともに)に外向き電流が存在した。しかしisolated round cellには僅かしか認められなかった。Tail電流の反転電位は細胞外液のカリウムイオン濃度が5mMのとき約-80mV、20mVのとき約-50mVでこれらの値はNernstの式で期待されるカリウムの平衡電位と一致した。よって外向き電流はカリウム電流であると結論された。カリウム電流のactivationとdeactivationのどちらの過程ともにsingle exponentialでfitできた。exponential fit で得られた時定数(τ)を膜電位に対してプロットすると、時定数は2つの指数曲線の和として近似できた。この時定数の電位依存性はシュワン細胞の2型カリウムチャネルと類似としていた。外向き電流は4AP,TEA,Ba2+により制御された。4AP,TEA,Ba2+のEC50はそれぞれ0.1mM,0.8mM,8mMであり、4APとTEAに高いsensitivityを示した。以上の結果からTtT/GF細胞にはカリウムチャネルが存在し、その発現は細胞の接触状態と係わっていることが明らかとなった。TtT/GF細胞の静止膜電位は-30から-50mVでありカリウムチャネルの活性化の膜電位にほぼ一致している。TtT/GF細胞は分泌細胞を取り囲むようにして存在するため、何らかの膜電位の変化がTtT/GF細胞のカリウムチャネルの活性化状況を変化させ、その結果隣接する分泌細胞の活動性に影響を与えている可能性が高い。またカリウムチャネルが細胞の増殖に関与しているという報告がある。グリア細胞の一種であるoligodendrocyteやシュワン細胞の増殖にはカリウムチャネルの量と活動状態が密接に関わっている。よってTtT/GF細胞でも細胞接触に伴うカリウムチャネル電流の増大が細胞増殖に影響している可能性がある。
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[Publications] YAMASAKI T.et al: "Regulation of K^+ chanels by cell contact in a cloned folliculo-stellate cell (TtT/GF)" Endocr.nology. 138. 4346-4350 (1997)
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[Publications] 山下直秀, 山路徹: "内分泌機能検査ハンドブック" 文光堂, 182 (1997)