1996 Fiscal Year Annual Research Report
異常甲状腺ホルモン受容体の機能解析に関する分子生物学および発生工学的研究
Project/Area Number |
08457262
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
中村 浩淑 浜松医科大学, 医学部附・属病院, 講師 (60164331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 孝三 浜松医科大学, 医学部, 助手 (50273181)
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Keywords | トランスジェニックマウス / 甲状腺ホルモン受容体 / 甲状腺ホルモン不応症 / サイレンシング作用 / ダイマー形成 / 酵母two hybrid system |
Research Abstract |
正常甲状膜ホルモン受容体(TR)ならびに甲状膜ホルモン不応症患者から発見された異常TRの作用機構を細胞レベルと個体レベルで調べ、これまでに以下の研究成果を得た。 A.C端欠失異常TR、βF451XおよびαF397Xを発現させたトランスジェニックマウスの作成と解析 (1)トランスジェニックマウスの作成。異常TRβF451XとαF397Xのそれぞれを、発現ペクター(EF-BOS)に組み込み、受精卵に注入してトランスジェニックマウスの作成にあたった。導入遺伝子の発現を特異プライマーを使ったPCRとサザンブロッティングで調べ、βF451Xマウスで数系統、αF397Xマウスで一系統のトランスジェニックマウス作成に成功した。さらにホモ接合体マウスの系統の確立にあたっている。(2)トランスジェニックマウスの解析。αF397Xマウスの作成はきわめて困難であったため、TRαの異常はあるいは出生に重篤な障害を与える可能性が考えられた。このことは臨床上TRα1の異常による甲状膜ホルモン不応症が発見できないことの理由であるかもしれない。成長過程においても、αF397Xマウスは正常マウスに比し低体重であった。(3)学習能力、記憶、行動解析を調べ、α、βいずれのトランスジェニックマウスも自発運動日内リズムが亢進している結果を得た。学習能力には差が無かった。 B.Two hybrid systemを用いた各種異常TRβのダイマー形成能の検討(1)GAL4-TR、VP16-RXRにGAL4-応答レポーター遺伝子を組み合わせたtwo hybrid system系を確立した。この系に種々の異常TRを加えると、異常TRのRXRとの結合能が高いほどGAL4-TR/VP16-RXR結合を干渉する。この転写活性干渉能力で異常TRのダイマー形成能を定量的に測定するという、新しい方法を開発した。Two hybrid systemで求めたTRのダイマー形成能は、ゲルシフト法で求めたTRとRXRのヘテロダイマー形成能とよく平行した。 C.TRのC末端部分に存在する転写活性ドメインの機能解析 (1)βF451XとαF397Xの基礎転写活性を抑制するサイレンシング作用を検討したところ、両者とも強い作用を持つことが分かった。サイレンシング作用は、αF397XではT3非存在下の正常TRαと同程度であったのに対し、βF451Xは正常TRβより有意に強かった。βF451Xのより強いサイレンシング作用の機序として、βF451Xが転写抑制性cofactorであるSMRTとより高い親和性で結合するためであることをうかがわせる成績を得ている。(2)αF397XとβF451Xのヘテロダイマー形成能をGAL4-TR/VP16-RXR two hybrid system系で検討したところ、βF451Xは正常TRβよりRXRとの親和性も有意に高いことが分かった。 D.TRβ1N末端の機能の検討。(1)TRβ1N末端の機能を調べるため、アミノ酸1、32、51、94から翻訳されるようTRβ遺伝子を修飾し、これらを細胞に発現させた。51から翻訳されたTRβ1は転写活性がその他のものより有意に弱いという興味深いデーターを得た。この機序は現在検討されている。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] T.Tagami,H.Nakamura,et al: "Starvation-Induced decrease in triiodothyronine binding activity of thyroid hormone rcceptor is due to a decrease in the receptor protein" Metabolism. 45(8). 970-973 (1996)
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[Publications] M.Taniyama,H.Nakamura,et al: "Mild resistance to thyroid hormone with a truncated thyroid hormone rcceptor beta" Exp Clin Endocrinol Diabetes. 106. 339-343 (1996)
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[Publications] S.Andoh,H.Nakamura,et al.: "Introducing a point mutation identified in a patient with pituitary resistance to thyroid hormone (Arg 338 to Trp) into other mutant thyroid hormone receptors weakens their dominant negative activities" J.Endocrinology. 151. 293-300 (1996)
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[Publications] 西山孝三、中村浩淑: "甲状腺ホルモン不応症" 内分泌・糖尿病科. 2(4). 359-367 (1996)
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[Publications] 中村浩淑、安藤晋一郎: "甲状腺ホルモン不応症" Medical Practice. 13(11). 1713-1716 (1996)
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[Publications] 中村浩淑: "核内レセプターの転写制御機構に関与するコファクター蛋白" 内分泌・糖尿病科. (印刷中).
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[Publications] 中村浩淑: "分子医科学シリーズ(4巻システムとしての身体) 容体からみた内分泌系の仕組みと受容体" MEDICAL VIEW社, 55-86 (1996)