1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08457292
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
狩野 猛 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30241384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内貴 猛 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (40241385)
和田 成生 北海道大学, 電子科学研究所, 講師 (70240546)
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Keywords | 内膜肥厚 / 動脈硬化 / 血管 / コレステロール / リポ蛋白 / 水透過速度 / 血管内皮細胞 / 壁剪断応力 |
Research Abstract |
動脈硬化症、嚢状能動脈癌および吻合部内膜肥厚などの血管病の局所的発病機構として我々が提唱しているところの血管内壁表面上におけるリポ蛋白(コレステロールの担体)の流速依存性濃縮・枯渇現象に関して、理論および実験の両面より検討し、以下のような結果を得た。 (1)コンピュータ・シミュレーションにより、動脈のまっすぐな部分、および分岐部について血管壁の水透過程を考慮に入れて定常流下におけるフローパターン、流速分布、管壁における剪断応力の分布、および管壁表面上におけるリポ蛋白の濃度を求め、これらにおよぼす諸因子の影響について検討した。その結果、まっすぐな血管においては、流れが遅く、リポ蛋白分子のサイズが大きく、管壁における水透過速度が大きいほど、そして血管に沿って下流に行くほど、血管内壁表面上におけるリポ蛋白の濃度が高くなることが判った。動脈の分岐部においては、壁剪断速度が小さく、長区間にわたって管壁に沿って流れてきた流体素子が合流する流れの淀み点および剥離点近傍で血管内壁表面上におけるリポ蛋白の濃度が高くなることが判った。 (2)上記の現象が血管内で起こることを実証するための一つとして、多孔質フィルター上に培養したウシ大動脈内皮細胞の単層を平行平板型流路の壁の一部となるように装着して流れの実験を行い、内皮細胞単層表面上におけるリポ蛋白の濃度によって変化する細胞単層よりの水分の透過速度を測定することにより、リポ蛋白の壁面濃度におよぼす流速(壁剪断速度)の影響について検討した。その結果、リポ蛋白の壁面濃度は、壁近傍の流速に依存してほぼ可逆的に変化し、壁剪断速度が小さいほど高くなることが判った。このことにより、先の理論解析の結果示唆された血管内壁表面上におけるリポ蛋白の流速依存性濃縮・枯渇現象が実際に血管内皮表面上で起こることを実験的に確認することができた。
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[Publications] S. Endo: "Flow patterns in dog aortic arch under a steady flow condition simulating mid-systole" Heart and Vessels. 11(4). 180-191 (1996)
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[Publications] 狩野 猛: "血管病の局在化におよぼす物理的・流体力学的因子の影響" 電子科学研究. 4. 22-32 (1996)
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[Publications] 狩野 猛: "冠動脈のレオロジー" 狭心症(篠山重威編,医薬ジャーナル社). 150-164 (1996)
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[Publications] 石坂高英: "生体由来人工血管の開発のための動物実験" 北海道大学電子科学研究所 技術部技術研究報告集. 3. 25-40 (1996)
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[Publications] 和田成生: "血液の流れ場におけるリポ蛋白輸送の数値シミュレーション" 電子情報通信学会技術研究報告. 96(113). 53-58 (1996)
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[Publications] 和田成生: "血管内壁表面上におけるリポ蛋白濃度に及ぼす流れの影響(コンピュータ・シミュレーションによる理論的検討)" 電子科学研究. 4. 108-111 (1996)