1997 Fiscal Year Annual Research Report
EBウイルス転写調節因子Z蛋白に対する抗体価測定法の開発とその意義に関する研究
Project/Area Number |
08457450
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古川 仭 金沢大学, 医学部, 教授 (40092803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹下 元 金沢大学, 医学部・附属病院, 助手 (40272976)
吉崎 智一 金沢大学, 医学部・附属病院, 助手 (70262582)
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Keywords | 上咽頭癌 / EBウイルス / Z蛋白 / 抗Z蛋白抗体価 / R蛋白 / 抗R蛋白抗体価 |
Research Abstract |
Epstein-Barrウイルス(EBV)は、伝染性単核症(Infectious mononuceosis,IM)の病原体として知られる一方、上咽頭癌(NPC)との病因的関連が強く示唆されている。そして他のヘルペス群ウイルスと同様、生体内では潜伏感染の様式をとるが、種々の刺激で再活性化し、再び複製サイクルに入りウイルス粒子を産生する。このようなウイルス転写活性化に必要な蛋白はEBVのBZLF1遺伝子により発現されるZ蛋白である。一方NPC患者では血清学的にも抗EBV抗体価の上昇が報告されている。特にウイルス複製サイクルに発現する早期抗原(early antigen,EA)や後期蛋白のEBV粒子抗原(viral capsid antigen,VCA)に対するlgA抗体は発症時すでに上昇しており、疾患特異性も高いことから、病勢のマーカーとして用いられてきた。しかし、腫瘍細胞ではウイルス複製はしばしば不完全に終わり、いわゆる流産感染となっている。このことを考えると、ウイルス複製サイクルにおいて早期抗原よりのさらに早く発見する前早期抗原(Immediate early antigen)である。Z蛋白やR蛋白に対する生体反応のほうがより早く病状を反映する可能性が考えられる。そこで今回、Z蛋白やR蛋白に対する血清抗体価を調べることにした。Z蛋白、R蛋白はそれぞれBZLF1,BRLF1遺伝子発現プラスミドを構築し、精製した。これらを抗原とし、担癌NPC患者,NPC緩解後患者の他、EBV関連疾患であるIM,ホジキン病患者や他の頭頚部癌腫瘍患者、および健常者血清との反応を、ウエスタンブロット法、ELISA法で検討した。その結果。担癌NPC患者では、全例抗Z蛋白,R蛋白抗体陽性であり、ELISA法での吸光度も他の群と比べて高値を示した。VCA-lgA抗体価と比較しても、抗Z蛋白、抗R蛋白抗体陽性はNPC特異性が高かった。以上よりNPC患者における抗Z蛋白、R蛋白抗体価測定は病勢の有用な指標となりうると結論された。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] 竹下 元 他: "上咽頭早期癌の診断と治療" Johns. 13(4). 619-624 (1997)
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[Publications] 脇坂尚宏: "上咽頭癌におけるEpstein-Barrウイルス関連因子および血管新生因子発現に関する研究" 金沢大学十全医学会雑誌. 106(1). 105-115 (1997)
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[Publications] 古川 仭 他: "上咽頭早期癌の臨床と遺伝子治療の可能性" Johns. 13(9). 1325-1328 (1997)
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[Publications] 古川 仭: "上咽頭癌の画像診断,CT,MRI所見" 日・耳・鼻・会報. 100(12). 1468-1471 (1997)
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[Publications] 三輪泰子: "Epstein-Barrウイルス前早期抗原定量法の確率と臨床的意義" 金沢大学十全医学会雑誌. 107(in press). (1998)
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[Publications] 古川 仭 他: "耳鼻咽喉科・頭頸部外科" 神崎仁編集,鈴木肇発行,南山堂, 471 (1996)
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[Publications] 竹下 元 他: "耳鼻咽喉科・頭頸部外科クリニカルトレンド" 野村恭也,本庄巌,平出文久偏,平田直発行,中山書店, 296 (1998)
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[Publications] M.Furukawa: "XVI World Congress of Otorhinolaryngology,Head and Neck Surgery,「SYDNEY'97」" G.McCafferty,W.Coman,R.Carroll,ed.Monduzzi Editore, 1783 (1997)
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[Publications] M.Furukawa: "Gann Monograph on Cancer Research A5 Epstein-Barr Virus and Human Cancer." T.Osato,K.Takada,M.tokunaga,ed. Japan Scientific Societies Press, χ arger, 190 (1998)