1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08457475
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
山下 典子 東京医科歯科大学, 歯学研究科, 助手 (00220343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 香織 東京医科歯科大学, 歯学研究科, 助手 (00276213)
江藤 一洋 東京医科歯科大学, 歯学研究科, 教授 (30014161)
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Keywords | 内田ラット / 哺乳類全胚培養 / 頭部神経堤細胞 / Pax-6遺伝子 / 頭蓋奇形 / 運動神経 / Islet-2遺伝子 / 体性運動性神経 |
Research Abstract |
脊椎動物の頭部形成は、神経管形成、頭部神経堤細胞の遊走と分化、脳・脳神経・感覚器の発生などを含む複雑な過程である。ヒトにおいてこのような過程になんらかの異常が生じると、例えば外脳症、口唇口蓋裂、小顎症、歯牙の形成不全といったさまざまな奇形となって現れる。当研究室では頭顔面奇形を有するミュータントラット(内田ラット)をモデルとして、頭部形態形成についての解析を進めている。このミュータントラットは、常染色体半優性の遺伝様式をとり、ヘテロでは小眼症を呈し、ホモは眼と鼻が形成されず、出生直後に死亡する。本研究では、このようなミュータントラットを実験材料とし、哺乳類頭顔面・脳・脳神経の発症機序を解明するために、形態学的・実験発生学的・分子細胞生物学的アプローチにより、多角的な解析を行った。とくに、本年度は1)頭蓋奇形に対する頭部神経堤細胞の役割の解明、および2)脳神経の異常について集中的に解析した。 1.内田ラットにおける頭蓋の奇形と頭部神経堤細胞の関わり 内田ラットホモ胎児の頭蓋を形態学的に解析したところ、鼻殻、涙骨、および鼻中隔と鶏冠を除く篩骨の大部分が完全に欠損しており、また、前蝶形骨、眼窩蝶形骨、上顎骨、前頭骨、前上顎骨、鋤骨、後頭骨の形態にやや異常が見られた。後頭骨の形態異常は、舌下神経孔の欠損であった(下記参照)。完全に欠損の見られた骨格要素は外側鼻隆起に由来することが伺われた。一方、哺乳類全胚培養系を用いて頭部神経堤細胞の移動様式を解析したところ、中脳から前頭鼻隆起へ移動する神経堤細胞の移動のみが冒されており、その他の神経堤細胞の移動様式には異常は認められなかった。中脳から前頭鼻隆起へ移動する神経堤細胞はのちに外側鼻隆起の形成に関わることが長期培養により判明した。したがって、内田ラットホモ胎児における頭蓋の奇形は、中脳神経堤細胞の前頭鼻隆起への移動が阻害されることにより、外側鼻隆起が形成不全となることにより生じたものと示唆された。 2.内田ラットにおける脳神経の異常 1)Whole mountの免疫染色により、内田ラットホモ胚では、外転神経・および舌下神経が欠損していることが判明した。これらの脳神経は体性運動性神経であり、一方、同じ吻尾レベルに発生する鰓弓神経(顔面・舌咽・迷走神経)は正常に発生していた。 2)体性運動性神経として発生すべき外転神経・および舌下神経の軸索伸長経路に異常が生じているかどうか蛍光色素による逆行性および順行性標識により検索したところ、顔面・舌咽・迷走神経根を用いて神経管の外に軸索伸長していることがわかった。 3)運動神経への分化そのものが抑制されているかどうか、分子マーカーの発現によって組織学的に解析したところ、内田ラットホモ胎児では一般的な運動神経細胞のマーカーであるIslet-1陽性細胞は誕生していたが、体性運動性神経細胞のマーカーであるIslet-2の発現が認められなかった。 4)外転神経・および舌下神経が投射する標的筋原基(外側直筋および舌筋群)の発生は形態的に正常であった。 以上のことから、内田ラットでは運動神経のサブタイプ決定の段階で発生異常が生じていることが示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Imai,H.,Osumi-Yamashita,N.,Ninomiya,Y.,and Eto,K.: "Contribution of early-emigrating midbrain crest cells to the dental mesenchyme of the mandibular molar tooth in rat embryos." Developmental Biology. 176. 151-165 (1996)
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[Publications] Osumi-Yamashita,N: "Retinoic acid and mammalian craniofacial morphogenesis." J.Biosci.21. 313-327 (1996)
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[Publications] 倉谷滋、大隅-山下典子: "篩骨とは何か.II.発生学的考察" The Bone. 10. 171-181 (1996)
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[Publications] 大隅-山下典子: "感覚器形成の分子機構" 実験医学増刊. 14. 186-192 (1996)
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[Publications] Osumi-Yamashita N.and Eto K: "Craniofacial embryology in vitro." Int.J.Devel.Biol.(in press).
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[Publications] Osumi-Yamashita,N et al.: "Cranial anomaly of homozygous rSey rat is associated with a defect in the migration pathway of midbrain crest cells." Devel.Growth & Differ.(in press).
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[Publications] 大隅-山下典子、二宮洋一郎、江藤一洋: "「神経生物学研究に必要な胚と個体の遺伝子操作法」ニューロサイエンスラボマニュアル 3 神経発生研究における哺乳類全胚培養法." シュプリンガー・フェアラーク東京 近藤寿人 編集 (in press), (151-165)