1997 Fiscal Year Annual Research Report
歯芽組織(歯髄,歯根膜組織)に特異的に発現している遺伝子のクローニン
Project/Area Number |
08457486
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
春日井 昇平 東京医科歯科大学, 歯学部, 助教授 (70161049)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯村 忠浩 東京医科歯科大学, 歯学研究科, 助手 (20282775)
大井田 新一郎 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (10114745)
|
Keywords | 歯根膜 / S100A4 / カルシウム / メカニカルストレス / 石灰化 |
Research Abstract |
S100A4は細胞骨格との相互作用が報告されているカルシウム結合タンパクの一つである。平成9年度は歯根膜組織におけるS100A4に焦点を絞り研究を進めた。歯根膜組織においてS100A4の発現が高く、萌出した歯の歯根膜組織におけるこの遺伝子の発現レベルは、未萌出の歯の歯根膜組織における発現レベルに比較すると著しく高かった。歯の萌出が完了すると、咬合力による大きな負荷が歯根膜組織にかかることから、S100A4の遺伝子の発現量はメカニカルストレスにより制御されている可能性が考えられる。そこで、培養ウシ歯根膜細胞にメカニカルストレスを負荷したところ、S100A4の遺伝子発現量の増加が観察された。 S100A4の抗体を用いて、歯根膜組織を免疫抗体法により観察したところ、S100A4は細胞内だけではなく基質中にも分布していた。培養歯根膜細胞の培地を電気泳動しWestern blottingをおこなった結果、アイソトープ標識した培地の分析結果から、歯根膜細胞がS100A4を分泌している可能性が示唆された。 ラットの骨髄細胞培養系においては骨様の石灰化組織が形成されるが、この実験系にS100A4のリコンビナントタンパクを添加すると、石灰化組織の形成抑制が起きた。ラットの頭蓋骨の発生過程におけるNorthern分析の結果、発生の初期におてはS100A4の発現が観察されたが、頭蓋骨の石灰化が起きる時期にはS100A4の発現が消失していた。また、in situ Hybridizationの結果、大部分の骨芽細胞にはS100A4の遺伝子の発現が観察されなかった。したがって、S100A4は石灰化に対しては抑制的な因子として働いている可能性が推測できる。 以上の実験結果より、S100A4の発現がメカニカルストレスにより制御されること、S100A4が歯根膜細胞の機能維持に何らかの役割を果たしていること、歯根膜細胞はS100A4を分泌すること、そして分泌されたS100A4は石灰化の抑制因子として作用する可能性が示唆された。
|