Research Abstract |
ポスト装着歯の歯根破折のメカニズムは,いまだ解明されていない.そこで,本実験は天然抜去歯を用い,亀裂および破折発生の力学的実験を行った後,その試料を用いて,組織学的観察等を行い,その様相を解明せんとするものである.初年度は下記の荷重実験を行い,本年度は,その試料を下記の組織学的観察試料として作製および観察中である. 1.実験材料;抜去上顎中切歯および側切歯に,ポスト孔を形成し,12%金銀パラジウム合金のポストクラウンをセメント装着後,シリコン人工歯根膜を付与し,レジンブロックに植立したものを荷重負荷実験に供した.なお抜去歯は,本年度も補充収集した. 2.荷重実験方法および実験群;切端側2.0mm,近遠心的中央部に歯軸に対して45°の傾斜荷重を万能引張試験機を用いてクロスヘッドスピード 1.0mm/minで負荷した.実験群はA〜Fの6群(計60歯)とし,A群は破折するまで負荷した.B〜F群は,A群の最大破折値(上顎中切歯64.195kgf,同側切歯37.028kgf)の90,80,70,60,50%とした. 3.組織学的観察試料の作製と一部観察所見;上記のブロックから実験歯のみ取り出し樹脂に包理後,スライドグラスに装着し,切断機ディスコプラン-TS(ストルアスA/S社)ほかを用いて通法により,反射光線による検鏡用研磨試料として歯軸と平行および垂直方向に作製し,50μmの連続写真としてCD-Rに書込み保存し,整理中である.また,一部は,実験歯を脱灰(モ-スの脱灰液)後,ポストクラウンを除去し,ヒストテックシステム(クルツァー社)を用いて,5μm〜10μmに連続薄切し,トルイジンブルー染色検鏡用試料を作製中である.現時点での観察所見は,(1)破折は,荷重方向と平行方向に唇舌的中央付近のポスト基底部から根尖に向かって発生する傾向にある.(2)破折線あるいは亀裂線は必ずしも直線的でなく,複数見られるものが多い.
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