1998 Fiscal Year Annual Research Report
鎮痛作用、抗不安作用に関するNitric Oxideの脳内情報伝達物質としての役割
Project/Area Number |
08457551
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鮎瀬 卓郎 長崎大学, 歯学部・附属病院, 助教授 (20222705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 信 長崎大学, 歯学部・附属病院, 助手 (70295088)
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Keywords | 痛み / 不安 / 脳内物質 / Nitric Oxide |
Research Abstract |
全身麻酔薬であるケタミンはNMDA受容体が関与する痛みに対して、治療効果が大きいが、その麻酔作用の機構について未だ不明な点が多い。我々はケタミンの麻酔作用・鎮痛作用が脳内のNO/cGMP系を介してどのように調節しているかを、ラット海馬でのMicrodialysis法を用いて検索、プロポフォールの変化と比較検討した。ケタミン投与群では100mg/kgを腹腔投与して完全にrighting reflex消失させた後10分ごとに経時的にNOの値を測定した。また、プロポフォール群では、80mg/kg腹腔内投与で就眠させた後、経時的に測定した。その結果、ケタミン投与群(n=8)では麻酔覚醒時よりNOの上昇がみられ、完全覚醒後(righting reflex回復)約30分で対照値に対し約140%の有意な上昇が、覚醒時に異常行動(rotation)が認められた。これに対し、プロポフォール投与群(n=7)ではNOの軽度の低下が認められ、完全覚醒後30分で対照値に対し、約80%とやや低下し、異常行動は認められなかった。ケタミンは麻酔覚醒時に悪夢などの不快症状が発現することが知られているが、ラットの異常行動はこれと同様のもので、Glutamateなどが最終的には関与している可能性が大きく、今回の結果からみて覚醒時に賦活されるNO/cGMP系がこれらを調節していると示唆される。ケタミンはNMDA受容体を拮抗して麻酔作用を発現するが、麻酔覚醒時には逆にNMDA受容体のhypersencitivityが起こり、細胞内NOが急激に産生され、それがシナプス前終末に拡散・作用し、Glutamateなどを分泌させると推察される。しかし、同じNMDA受容体を介して麻酔作用を発現するプロポフォールではNO/cGMP系に変化がないのは、両麻酔薬のGABAA受容体への関与の違いが考えられる。
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