1996 Fiscal Year Annual Research Report
細胞増殖・分化の制御におけるMAPキナーゼ・カスケードの役割
Project/Area Number |
08457613
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
河野 通明 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教授 (00027335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木曽 良明 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (40089107)
佐藤 仁彦 岐阜薬科大学, 薬学部, 助手 (00240945)
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Keywords | 細胞増殖・分化 / 増殖因子 / 分化因子 / MAPキナーゼ / 肝細胞増殖因子 / 神経成長因子 / 骨形成因子 |
Research Abstract |
1. PDGFなどで増殖刺激したSwiss3T3細胞において、活性化されたMAPキナーゼ(ERKs)の大部分は細胞質から核へと急速に移行した。一方、NGFで神経様細胞へと分化誘導したPC12細胞においては、活性化されたMAPキナーゼの一部は核に移行するが、かなりの部分は細胞質に留まることを明らかにした。これより、細胞増殖促進におけるMAPキナーゼの基質蛋白質としては核内の存在するもの(具体的には転写因子など)が重要であるが、一方、細胞分化の誘導に際しては核内だけでなく細胞質に存在する蛋白質をMAPキナーゼがリン酸化することが何らかの重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 2.MAPキナーゼ(ERKs)の活性化は、肝細胞増殖因子(HGF)、EGF、フォルボールエステル(PMA)に応答して細胞分散運動が誘導されるMDCK細胞、TMK1細胞などにおいても共通に認められた。また、各細胞をMAPキナーゼ・キナーゼ(MEK1/2)に対する特異的阻害剤(AMPC)で前処理すると、HGF刺激などによるMAPキナーゼの活性化がAMPCの濃度に依存して抑制され、同時に各刺激に応答した細胞分散運動が抑制されることを見いだした。これらの結果は、HGFなどによる細胞分散運動の誘導においてもMAPキナーゼ系の活性化が重要な役割を果たしている可能性を強く示唆するものである。なお、HGF刺激したMDCK細胞においては活性化されたMAPキナーゼの核への移行が全く認められず、ここではMAPキナーゼが細胞質に存在する蛋白質(例えば細胞接着の制御に関与するものなど)をリン酸化することが重要である可能性が示唆された。 3. TGF-βスーパーファミリーに属する因子(TGF-β、骨形成因子[BMP]、アクチビンなど)は、ERK MAPキナーゼ系に全く依存することなく様々な細胞の増殖、分化を誘導することを見い出した。一方、これら各因子で刺激した細胞においてはp38 MAPキナーゼが共通に活性化されることより、TGF-βスーパーファミリー因子の多様な生理機能の発現においては、多くの細胞増殖・分化因子の場合とは異なり、p38 MAPキナーゼを含む新たなシグナル系の関与が示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Iwasaki, S.: "Characterization of the Bone Morphogenetic Protein-2 as a neurotrophic factor. Induction of neuronal differentiation of PC12 cells in the absence of mitogen-activated protein kinase activation." J. Biol. Chem.271巻. 17360-17365 (1996)
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[Publications] Hattori, A.: "Bone morphogenetic protein-2 is markedly synergistic with tumor necrosis factor in stimulating the production of nerve growth factor in fibroblasts." Biochem. Mol. Biol. Int.38巻. 1095-1101 (1996)
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[Publications] Hattori, A.: "Tumor necrosis factor (TNF) stimulates the production of nerve growth factor in fibroblasts via the 55-kDa type 1 TNF receptor." FEBS Lett.379巻. 157-160 (1996)
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[Publications] Nagamine, K.: "Dissociation of c-fos induction and MAP kinase activation from HGF-induced motility response in human gastric carcinoma cells." Eur. J. Biochem.236巻. 476-481 (1996)
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[Publications] Sakakura, C.: "Induction of apoptosis by sphingosine, N, N-dimethysphingosine, and epidermal growth factor in solid tumor cells : A possible involvement of mitogen-activated protein kinase cascade in apoptotic signaling." Brit. J. Cancer. (in press). (1997)