Research Abstract |
本研究の目的は,現在指摘されている小児の「運動不足」の教育的解決を図るうえから,教科外体育的活動をも視野に入れた,また体育学習および保健学習の統合の促進に向けた小学校体育科における学習内容を系統・体系化した実践仮説の構築およびそれらの検証を試みることである. そこで本年度は,運動の促進を図る学習内容の系統・体系を仮説するための資料を収集することを目的とした. 対象は,東北・北海道地区,関東・信越地区,東海・北陸地区,近畿地区,中国・四国地区および九州・沖縄地区の6地区の都市部とそれ以外に存在する児童,1年生から6年生まで2500名である.調査内容は,運動,栄養および睡眠の3要因各々に関する子どもの認識調査および運動促進にかかわる実践についてのビデオ観察ならびに学習ノートからの実態調査をした. その結果,生活実態調査および認識調査から 1.子どもたちは,運動,栄養,睡眠のアンバラスなものが多いこと. 2.社会科学的要因として,子どもたちは,遊ぶ意欲を有しているものの,塾がよいなど習いごとに時間が奪われ,運動不足状態にあること. 3.生物科学的要因として,子どもたちの生体は,摂取エネルギー量に占める脂肪の割合が高く,低体温状態にあり,成人病様危険因子を有するものが多いこと. が明らかにされた. これらから,学校体育では,スポーツに関わる基礎・基本的な知識や技能を創造的実践能力として統合できる力を身につけさせる必要性を論じ,すなわち,より高い楽しさを味わうためには,分析,判断,創造して統合していく過程を学習内容とすることが,より良い生き方のできる子どもを育てることになるものと考察した. 来年度は,これらの調査結果をさらに分析し,運動の促進を図る学習内容の系統・体系を仮説し,これらによる実験授業を実施し,実践仮説の検証を行う予定である.
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