1997 Fiscal Year Annual Research Report
幼稚園児から成人における科学概念の獲得と変化に関する研究
Project/Area Number |
08458049
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
武村 重和 広島大学, 教育学部, 教授 (70112159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MANZANO V.U. 広島大学, 教育学部, 助教授 (80208719)
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Keywords | 単純電気回路 / 文脈依存性 |
Research Abstract |
本年度、本研究では、佐賀県と富山県を抽出し、物理概念の獲得と変化に関する調査を行い、様々な歴史的・社会的制約下での子ども達の科学概念の獲得と変化のプロセスについて検討を行った。先行研究を理論的に再検討し、細心の注意を払い、調査課題を作成し、調査交渉及び研究組織の確立を行い、単純電気回路をトピックスとして、大規模な郵送アンケート調査を行った。その結果、次のようなことが明らかになった。 1,先行研究において、安藤らが指摘するように、アンケート調査を行う際には、選択肢あるいは応答カテゴリーの作成において、先行研究の成果に過度に頼ることなく、自ら綿密な手続きを行う必要がある。 2,単純電気回路の負荷の違いといった課題文脈の違いによっては各電流モデルの選択率に違いは見られない。 3,佐賀県と富山県といった学習者の居住地域の違いにより、学習者の選択する電流モデルの出現傾向に違いは見られない。 4,中学1年、3年といった学習者の学年及び居住地域に関わらず、負荷に関する知識を学習者に提示することが、単純電気回路の認知に影響を及ぼしている。 こうした結果より次のようなことが示唆された。Osborneらが見いだした四つの電流モデルが世界中で見いだされていることと併せて考えると、先行研究では、日常経験あるいは学校理科学習の効果を中心に論じられる傾向がある単純電気回路に関する学習者の認知に、生得的な要因が影響している可能性が十分にあると思われる。そして、理科のように、電気やエネルギーといった目に見えない科学概念を獲得していく際には、恐らく教師の提示による知識が、子どもの学習に大きく影響を及ぼすだろう。
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