1997 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の放射線および酸素ストレス応答の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
08458153
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
米井 脩治 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60093340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 秋梅 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00260604)
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Keywords | チオレドキシン / グルタレドキシン / 活性酸素 / レドックス / OxyR / ジアミド |
Research Abstract |
細胞内での活性酸素の生成と消去の間には厳重なバランスは維持されているが、放射線などの環境因子によって細胞内の活性酸素濃度が増大し、消去酵素の処理能力を超えるようになると酸化ストレス状態に陥る。しかし、細胞はその活性酸素濃度の異常を感知し、そのシグナルを伝達して必要な特定遺伝子の発現の誘導をうながし、防御系の増強を行う。誘導されるシステムは、過剰の活性酸素を消去するものだけでなくDNA修復酵素も含んでいる。大腸菌では、H_2O_2に応答して30種類以上のタンパク質が誘導合成される。還元型OxyRは常にそのレギュロン遺伝子のプロモーター領域に結合しており、細胞内のH_2O_2との反応によって酸化型への変換が起こり、これに伴って遺伝子の転写が促進される。我々は、細胞内のレドックス制御に関与しているチオレドキシン、チオレドキシン還元酵素などの酵素が酸化ストレス応答の発現を制御する可能性について検討した。大腸菌において酸化型のチオレドキシンが過酸化水素の消去に働くカタラーゼHPIの転写量を増大させること、またこの調節が過酸化水素適応応答を制御しているOxyRタンパク質を介していることが示された。さらにOxyRの活性化が過酸化水素だけではなく、チオレドキシンの関与のもとに細胞内のレドックスバランスの異常によっても起こることが分かった。このようにチオレドキシン系が過酸化水素適応応答の制御に重要な役割を果たすことが分かった。
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[Publications] Q.M.Zhang and S.Yonei: "Replication of DNA templates containing 5-formyluracil,a major oxidative lesion of thymine in DNA" Nucleic Acids Research. 25(20). 3969-3974 (1997)
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[Publications] 米井脩治, 張秋梅, 松本由記子, 中原岳久: "酸化ストレスと細胞制御:生物のパラドックス" 放射線生物研究. 32. 87-104 (1997)
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[Publications] Takemoto,T., Q.M.Zhang and S.Yonei: "Different mechanisms of thioredoxin in its reduced and oxidized forms in defense against hydrogen peroxide in Escherichia coli" Free Radical Biology and Medicine. 24(5)(印刷中). (1998)
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[Publications] Zhang,Q.M., A.Tachibana and S.Yonei: "Experimental Protocols for reactive oxygen species and reactive nitrogen species (RNS)" Oxford University Press, 250 (1998)