1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08458168
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
椿 宜高 国立環境研究所, 生物圏環境部, 上席研究官 (30108641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨山 清升 鹿児島大学, 理学部, 助手 (30272107)
永田 尚志 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 主任研究員 (00202226)
高村 健二 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 主任研究員 (40163315)
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Keywords | 野生生物 / 遺伝的多様性 / 左右対称性のゆらぎ / 自然淘汰 / 性淘汰 / 保全生物学 / 個体群 / 生存力 |
Research Abstract |
ヒガシカワトンボの雄にはオレンジ翅と透明翅の2つのタイプが存在する.オレンジ翅の色彩には個体変異が大きく、変異の主要な原因はサイズと前繁殖期間の摂食量がであることが分った.フィールドでの観察の結果、オスの闘争能力や交尾成功度は翅色の濃さに相関があることが分り、色彩は生存力の信号として機能していることが示唆された. 1977年から1982年にかけて沖縄本島で実施された殺虫剤と誘因剤を用いたミカンコミバエの根絶事業では、毎月モニタートラップで捕獲された標本が保管されている.これを用いて左右対称性のゆらぎ(FA)の測定を行った.その結果、根絶事業の進行とともにFAが増加していたことがわかった。その原因は絶滅直前の本種の分布様式などから、FAが増大した原因は絶滅直前におきた近親交配のために近交劣化現象があらわれたためだと考えられた。 渡り鳥は、渡りのストレスがあること、感染経路が多い(繁殖地と越冬地)ことのため、留鳥よりも寄生虫感染率が高い可能性がある。利根川および霞ヶ浦湖岸のヨシ原において捕獲された6種類のホオジロ属(ホオジロ、ホオアカ、カシラダカ、アオジ、シベリアジュリン、オオジュリン)から血液を採取し、5種類の血液内寄生虫(原虫)の感染率を調べた。寄生率はどの種もきわめて低く、留鳥よりも渡り鳥の方が感染率が高いという予測は支持されなかった. トゲウオ集団の生息域の大きさとFAとの間には負の相関が見られたが、最近生息地の保全により個体数が回復した集団で、FAの減少は生じていないことが分った.今後の回復過程を追う必要がある.
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Research Products
(9 results)
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[Publications] Tsubaki Y.: "Fluctuating asymmetry of the oriental fruit fly(Dacus dorsalis)during the process of its extinction from the Okinawa Islands." Conservation Biology. 12. 926-929 (1998)
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[Publications] Tsubaki Y.& Matsumoto K.: "Fluctuating asymmetry and male mating success in a sphragis-baring butterfly Luehdorfia japonica(Lepidoptera: Papilionidae)." J.of Insect Behavior. 11. 571-582 (1998)
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[Publications] 椿 宜高: "カワトンボ:色彩多型の謎を探る." 昆虫と自然. 33(2). 20-25 (1998)
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[Publications] 椿 宜高: "生物多様性を守るもの-技術力か洞察力か." 国立環境研究所ニュース. 17(1). 2-3 (1998)
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[Publications] Siva-Jothy M.T., Tsubaki Y.& Hooper R.E.: "Decreased immune response as a proximate cost of copulation and oviposition in a damselfly." Physiological Entomology. 23. 274-277 (1998)
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[Publications] 椿 宜高: "大絶滅時代における生物多様性研究." 地球環境研究センターニュース. 9(2). 16-22 (1998)
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[Publications] 椿 宜高: "野生動物の体色は何を語るか." 電気評論. 83(9). 62-63 (1998)
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[Publications] Takamura,K.: "Wing length and asymmetry of male Tokunagayusurika akamusi chironomid midges performing alternative mating tactics." Behavioural Ecology. (1999)
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[Publications] Sodhi,N.S., Adlard,R.D., Nagata,H.& Kara,A.U.: "Low prevalence of blood parasites in six Emberiza species in Japan." Jap.J.Ornithol.47. 63-65 (1999)