1997 Fiscal Year Annual Research Report
含フッ素アミノ酸導入ペプチドによるトロンビン受容体活性化機構の解明
Project/Area Number |
08458178
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
下東 康幸 九州大学, 理学部, 教授 (00211293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野瀬 健 九州大学, 理学部, 助手
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Keywords | トロンビン受容体 / 受容体活性化機構 / 受容体内蔵リガンド / 含フッ素アミノ酸 / 含フッ素芳香族アミノ酸 / 血小板凝集 / 血栓 |
Research Abstract |
酵素トロンビンの受容体は『リガンドを自分自身に内蔵する』新しいタイプの受容体であり、このリガンドに相当する合成ペプチドSer-Phe-Leu-Leu-Arg-Asn-Pro(SFLLRNP)だけでも活性化される。本研究の目的は、受容体起動に決定的に重要である2位Phe-フェニル基とトロンビン受容体の相互作用が、スタッキングによるπ-π相互作用か、Phe-フェニル基上の水素原子が関与したCH/π相互作用かを決定し、さらに、Phe-フェニル基の受容体結合部位を決定することである。前年度、2位フェニル基に少なくとも1個以上の水素原子が残っていることが必要で、それはメタ位である可能性が強いことが示唆された。本年度はさらにフェニルアラニンのフェニル基フッ素3置換体を化学合成し、これらをSFLRNPに導入し、受容体応答を検討することにした。その結果、3,4,5-トリフルオロフェニルアラニンを導入したときでも約1/10の活性が残存したことより、オルト位の水素原子も活性発現に必要なことが判明した。これら含フッ素フェニルアラニン誘導体を含むアナログの検討により、受容体起動にはPhe-フェニル基上の水素原子が関与したCH/π相互作用が決定的に重要である、と結論された。これはさらに、トリフルオロメチルフェニルアラニンを含むアナログの活性検討からも妥当であることが確認された。 受容体リガンドペプチドには本質的に必須なアミノ酸残基が存在するが、トロンビン内蔵リガンドでは2位Pheである。従来、このような芳香族アミノ酸の相互作用は「疎水相互作用」ということで理解されていたが、本研究によりはじめてその詳細な相互作用様式か明らかとされた。すなわち、2位Phe-フェニル基とトロンビン受容体ベンゼン環の相互作用が水素原子2個が関与した多重CH/π相互作用であることが判明した。今後、トロンビン受容体ベンゼン環を特定することが重要である。このためトロンビン受容体のcDNAクローンを入手し、現在第5膜貫通αヘリックスに存在する芳香族アミノ酸クラスターをターゲットに、変異体受容体を作製中である。
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[Publications] Takeru Nose: "The Role of Arginine in Thrombin Receptor Tetherd-Ligand Peptide in Intramolecular Receptor Binding and Self-activation" Bull.Chem.Soc.Jpn.(印刷中). (1998)
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[Publications] Tsugumi Fujita: "Agonist-antagonist Structure-activity Relationships of Thrombin Receptor Tethered Ligand Peptide" Peptide Science 1997. (印刷中). (1998)
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[Publications] Tsugumi Fujita: "Design and Synthesis of para-Fluorophenylalanine Amide Derivatives Containing N-Terminal Thiol as Thrombin Receptor Antagonist" Peptide Chemistry 1996. 233-236 (1997)
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[Publications] Takeru Nose: "Platelet Aggregation Activity of Thrombin Receptor-Tetherd Peptide Ligand Containing Free Thiol or Activated SH Group" Peptide Chemistry 1996. 277-280 (1997)